カイロタイムズ099号
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(3)2014年11月1日発行 カイロタイムズ 99号で2番目に古いカイロ大学で、D.D.パーマーが設立したとも言われています。現在では、DCプログラムだけでなく、マッサージセラピーのコースやスポーツサイエンスの修士号コースなども提供しています。 また、UWSの学生の、全米カイロプラクティック試験委員会(NBCE)統一試験の平均点数は、過去14年間、全米のカイロ大学の中で1位です。 私は、ブリムホール学長の下、副学長として、大学の運営全般の責任者です。編集部 ご家族が代々カイロプラクターだとお伺いしましたが、ご自身のことについても少しお話頂けますか。エバンス 父、祖父、祖父の叔母さんがカイロプラクターだったので、私で4代目です。とはいえ、カイロプラクターになろうと子供の頃から決めていた訳ではなく、大学の時にそう思い立ち、進路変更をしました。 ローガン大学卒業後、17年間カイロプラクターとして臨床をしました。その後、アラバマ大学で、修士号、博士号を取得して、いくつかの教育機関を経て、約1年前からUWSで働いています。編集部 長く臨床をされていた訳ですが、臨床と研究・教育ではどちらに興味がありますか。エバンス 研究・教育分野で編集部 今回の来日目的を教えて頂けますか。エバンス副学長(以下、エバンス) JFCPの国際セミナーの講師として来日しました。セミナーでは、私と同僚が行った、姿勢と疾患の関連性に関する研究について講義し、実技も行いました。編集部 カイロプラクターの非カイロプラクターへの技術セミナーは禁止されていますよね。実技とおっしゃると?エバンス もちろんアジャストではなく、軟部組織に対するアプローチです。編集部 初来日とのことですが、日本や学生に対する印象や感想を教えて下さい。エバンス 日本は清潔で街が美しく、誰もが親切で、感激しました。また、学生も大変熱心で真面目で感心しました。編集部 日本では米国のカイロ大学といえば、パーマー大学などがよく知られており、UWSはあまり馴染みがありません。大学について、また、ご自身の立場について少しご説明頂けますか。エバンス UWSはオレゴン州ポートランドにある、世界すね。UWSに加え、アラバマ大学でも非常勤としてオンラインコースで教えています。編集部 カイロも含めて最近のアメリカの教育の動向について教えて頂けますか。エバンス 2つの傾向があります。まず1つは、(インターネットによる)オンラインコースの台頭です。 UWSでも、科学科目をいくつか、オンラインで提供しています。また、最近、「ストレイターライン(StraighterLine)」という会社と提携を結びました。ハーバード大卒の創業者が、手頃な料金での学位レベル教育提供を目指して設立したオンラインコースです。現在では全米で70以上の大学と提携、400以上の大学が単位を認定しています。ストレイターラインで取得した単位はUWSの単位として認められます。カイロ大学の中で提携を結んだのはUWSが初です。 もちろん、オレゴン州立大学などの公立大学とも提携があり、学士課程の最終学年はDCプログラムの初年度として履修できます。DCプログラム在学中に公立大学から学士が授与され、既存の方法より短い修業期間でDCが取得できる仕組みです。編集部 ストレイターラインのメリットは何ですか?エバンス 何といっても学費の安さです。年間の学費が12000米ドル(約132万円)程度です。しかし、修了時の学生の到達度は、通学型と変わりないという結果が証明されています。 万人に向いた学習方法ではないかもしれませんが、生活スタイルにあわせ、手頃な学費で大学レベルの教育を受けることができます。大学側としても時間や学費の問題で入学を諦めざるを得なかった学生を受け入れることができます。 実は、ストレイターラインとの提携を発表した直後、他のカイロ大学より問い合わせがありました。その大学も検討はしていたが、なかなか踏み切れなかったそうで、今後、UWSに続き、提携を結ぶカイロ大学も増えていくのではないかと思います。編集部 一般科目でなく、DCプログラムの中の専門科目もオンラインで提供される日がくるのでしょうか。例えば、講義科目はオンラインで、通学するのは実技科目だけといったように。エバンス ありえると思いますよ。実際、その形態で提供されている医師助手(PA)の修士コースなども存在しますから。編集部 もう1つの傾向とは?エバンス 能力ベースの査定ですね。大学で単位を取得していなくても、所定の試験に合格したり、これまでの経験を提出したりすることにより大学での学習と同等の能力があると示せば、単位を認定していこうという考え方です。編集部 UWSや他のカイロ大学では既に運用されているのでしょうか?エバンス いえ、まだですが、UWSでは今後、検討していく予定です。編集部 最後に、UWSの今後の日本での展開等の予定があれば教えてください。エバンス JFCPとさらなる提携を現在協議中です。UWSエバンス副学長インタビュー 日本カイロプラクティック協同組合連合会(JFCP)主催国際セミナーのために来日した米国ウエスタンステイツ大学(UWS)副学長ウィル・エバンス博士に、日本の感想やアメリカのカイロ教育などについて聞いた。エバンス副学長第46回ダイレクトテクニック仲井康二DC, CCSP 回盲弁の下方に広がる嚢状の部分を盲腸と呼びます。体表から観ると、鼠径靭帯の上方で、右腸骨窩に位置して、臍とASIS(前上腸骨棘)を結んだ線の下位1/3にあたります。 盲腸の下端からは、指状の鉛筆ぐらいの大きさで、長さ5~10㎝の虫垂が下がっています。虫垂は虫垂間膜で緩やかに固定されていますが、度々色々な方向に迂回して、その位置が移動します。これは虫垂が、小さな間膜(虫垂間膜)だけで、後腹壁についているためであると言われています(図1)。 虫垂の粘膜層には、リンパ小節が多数観られます。この管壁は舌や咽頭の扁桃に似ているために“腸の扁桃”とも呼ばれ、扁桃と共に免疫に需要な役割を果たしていると考えられています。虫垂は消化管粘膜下のリンパ性組織として、小腸のパイエル板とほぼ同じものだとも言われています。また虫垂は乳児期から徐々に増大して、青年期に最大となり、リンパ球や抗体の産生が盛んに行われますが、60歳以降は萎縮してしまいます。 これが一般的な虫垂の解剖・生理学的な説明となりますが、自分にとってはいまだに摩訶不思議な器官なのです。昔から幾つかの疑問がありました。1つ目は、いかなる理由で盲腸の下に位置して、どうして虫垂は自由に動けるようになっているのか、そして何故、虫垂炎が頻発に起こるのかです。 虫垂炎(一般で言う“盲腸炎”)は若年層に多発する疾患ですが、前述したように小腸にはパイエル板があり、リンパ節が大量に含まれます。つまり小腸はリンパ球を大量に含み、身体の中でウイルスや体内に侵入した毒素に対する防御作用が最も盛んに働く部分です。にも関わらず、どうして虫垂が大腸の一部に位置するのか、その必要性が分かりません。しかし炎症を引き起こすのですから、盲腸にまで毒素が到達していると考えるしかありませんが…… リンパ節とは、リンパ球の休憩所であり、ウイルスなどの毒素を無毒化する攻撃場所とも考えられています。リンパ節は身体に600個程あると言われています。一般的に思い浮かべるのは、鼠径部と腋下、そして頸部に含まれるリンパ節ですが、実はリンパ節全体の半分は、小腸付近に集中しているのです。それだけ防御作用に富んでいる小腸の先に、再びリンパ球が集まる部分がどうして必要になるのか疑問を抱いたのです。パイエル板と異なり、盲腸の下部にぶら下がるような形状をした虫垂が持つ意味とは何なのでしょうか。侵入した毒素を待ち構えた罠(落とし穴)とも思える虫垂に流し込み、虫垂自体の体勢を変えながら、毒素と闘うのだと考えると、これも少し不自然だと考えてしまうのです。 身体は、侵入してきた敵(毒素)に、まずは咽頭のワイダイエル扁桃輪で戦いを挑みます。そこで生じるのが扁桃炎です。生きのびた敵は、胃の中で胃酸による第二次攻撃を受けます。胃での壮絶な戦いで生じた産物が、胃炎の原因になります。それでも生き延びた敵は、小腸のパイエル板に含まれるリンパ球の攻撃を受けます。その攻撃にも耐えた(?)敵は、盲腸を通過して虫垂に含まれるリンパ球との戦いに挑むことになります。何という総攻撃でしょう。そこまでしても生き延びる敵が存在するのかも疑問ですが、大腸にまで到達(生き延びた)した敵(毒素)は、最終的に便として排泄される運命となります。 これまで完璧に近い防御作用を持つ事になったのは、“結核菌”に対応するためでは?と考えています。今でも世界中に蔓延している結核ですが、一昔よりはかなり減少しているような気がします(それでも日本では年間に2万人ほど発症しているらしい)。これは自分が齢をとり、結核になる恐れが軽減したために、気にしなくなっているだけかも知れませんが、昔はかなり深刻な病気だったと思います(しかし現在は高齢者の罹患率が増えているそうです)。 一昔前、多くの子どもが生まれていたのは、多くの子どもが結核などの病で命を失ったからで、高齢者に話を伺うと、元々7~8人兄弟だったのが、4~5人は結核などの様々な疾患で命を落とし、2~3人しか生き延びていないとおっしゃいます。 今では扁桃腺や虫垂の摘出手術もしない方向にあると聞きます。自分の少年期は、扁桃炎や盲腸(虫垂炎)にかかった人は、ほぼ100%摘出手術を受けていました。何時も時代の著しい変動に驚きますが、一昔前までは扁桃炎や虫垂炎になった人の数は、今の数倍に及んでいた筈です。何の変化が扁桃炎や虫垂炎になる確率を減らしているのかは定かではありませんが、結核に罹患する人の減少と、扁桃炎や虫垂炎の減少率と並行しているような気がするのです。 19世紀末に細菌学者であるコッホによって発見された“結核菌”ですが、今でも後進国では猛威を振るっているようです。人間は多くの敵との戦いに対応するために、進化の過程で多くの防御機構を作り上げたのでしょう。その中で作られた“虫垂”なのでしょうが、まだまだ多くの疑問が残ります。 その中で今は、多くのリンパ球が含まれる“リンパ管”や“リンパ循環”が持つ多くの謎に挑戦しています。免疫を司る白血球への挑戦は、まだまだ続きそうです。免疫とカイロプラクティックとの繋がりを信じていますが、謎は深まる一方です。いつか光明が射すと願っています。第2腰椎 盲腸(虫垂)(図1)

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