カイロタイムズ098号
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(6)2014年8月1日発行 カイロタイムズ 98号 渡星1年後の2002年7月、私は日本メディカルケアで新たに働き始めました。幸いなことに、クリニック内のMDの協力のおかげで多くの患者さんにカイロプラクティック治療を施すことができました。その頃、当地のカイロ業界も大きく成長していったように思います。 例えば、TCA(S)では2004〜2008年に、外部からのスピーカーを招き、継続教育も含めた年1回のセミナーを行いました。また、それと同時期にカイロプラクティック開業の自主規制などの規定が作成されたりもしました。 しかし、TCA(S)会員以外のカイロプラクターがその規制を守ることはなく、特に2009年頃、多くのカイロプラクターが当地へ集まり、非会員の人たちが増加していくと、会員と非会員の間には大きな溝が出来てしまいました。そんな中でもシンガポールは年々発展を続けており、私の来星した2001年と比べれば比較にならないほどの注目度です。そのため、これからも多くのカイロプラクターが当地に開業していくことと思いますが、先に述べた現状も一つの要因となり、現在に至るまで政府との法規制に関する話し合いは未だに並行状態です。これから先、TCA(S)が政府と共にどのようなアクションを起こすかを期待も込めて見守っていきたいです。 最後に、ここ10年目覚ましく発展している当地ですが、まだまだカイロプラクティックが浸透しているとは思えません。確かに、非会員による啓蒙活動により、カイロ治療を知った方々も増えていますが、オーバーアジャスト気味の治療回数や、明らかに商売重視のパッケージング治療のせいで印象が悪くなっているのも事実です。セカンドオピニオンやアドバイスを求め、私が働く病院内クリニックに来院される方たちとお話する度に思うことは一つ、「当地にいるカイロプラクターが、会員、非会員問わず協力して変わらぬ限り、当地のカイロプラクティックに未来はない」ということです。 シンガポールは人口530万人の小さな国です。まだまだ発展途上な当地のカイロプラクティック事情は、単純に日本との比較は出来ませんが、日本のカイロプラクティック事情の縮図に見えるのは私だけでしょうか。シンガポールカイロプラクティック史②齊田貴文DC 前号、前々号にて香港でのカイロプラクティックの状況についてお話してきました。そしてこの6月からついにカイロプラクティックを締め付ける法律が施行されました。大きく変更された点がいくつかあります。1 ホームページにはクリニックの住所、電話番号しか載せてはいけない これに従うと「カイロプラクティックとは何か?」ということをホームページで説明することができなくなります。アメリカやカナダ、オーストラリアなどカイロプラクティックが広く浸透した所でさえ的確にカイロプラクティックを認識している人はあまりいません。香港という比較的新しいカイロプラクティック市場では非常に大きな影響がでるのではないかと危惧しています。2 自分からカイロプラクターと自己紹介してはいけない 相手からお仕事は何をされていますか?と聞かれない限り自分からカイロプラクターと自己紹介してはいけない。また自分の名刺には免許番号を記さないといけない。ということですが、これは特に意味・目的が理解できない取り決めだと思います。3 パッケージは10回以下に限る 香港ではパッケージ(回数券)を売るのが一般的です。この回数券を売るということについては賛否両論、さまざまな意見があります。1回の治療で治ると言い切る先生もいれば、1年間定期的に治療することによって治るという先生もいらっしゃいます。また、健康のために定期的に治療を続けて受けていきたいから回数券を買うことで少しでも割引があった方がいいという患者もおられます。 もし、回数券を売りまくってからの計画倒産など悪質な事例が多発するのであれば別ですが、今までカイロプラクティック業界では一度もそのような問題が発生したケースはありません。よってこれは政府によってコントロールされるべきことではないと考えています。 現在、カイロプラクターズ協会と政府との間で交渉が続けられていますが、どのような結果になるかは全く予想できない状態です。ここ何年かの動きが、香港においてカイロプラクティック業界が生き残れるかどうかの重要なポイントになるのではないでしょうか。青 耕平DC法律改定の影響 カイロプラクティックの教育は、DDパーマーがハービー・リラードに最初のカイロプラクティック・アジャストメントを行った1895年の2年後、1897年に始まりました。 その学校は現在のPalmer College of Chiropracticであり、アイオワ州ダベンポート市にあります。DDパーマーが卒業生に与えたDC学位証書には、教わったこと(カイロプラクティック)を臨床し、教えることが出来る、と書かれていたことから、全米各地にカイロプラクティックの学校が出来始め、一時は80校を超えるカイロプラクティック学校がありました。吸収合併やCCEの影響などで廃校となった学校もあり、現在17校のカイロプラクティック大学があります。ABC順に、Cleveland、D-Youville、Life、Life West、Logan、National、New York、Northwestern、Palmer、Palmer Florida、Palmer West、Parker、Sherman、Southern California、Texas、Bridgeport、Western Statesです。 カイロプラクティックの名称を大学名に保持する単科大学(カレッジ)は、源泉であるパーマー(Palmer College of Chiropractic)を筆頭に計9校があります。 元々一般の総合大学(ユニバーシティー)にカイロプラクティック学部(学科)が創られたのは、University of Bridgeportなど計2校。 カイロプラクティックの単科大学がマッサージ等の学科を付け加え、カイロの名称を捨ててユニバーシティー化したのは、National University of Health Sciencesなど6校です。 筆者はカイロプラクティック留学で渡米した頃に、本場のアメリカのカイロプラクティック大学全てに資料請求をして情報を収集し、ESLやプレ・カイロの学期の狭間の休みを利用して見学ツアーに行きました。その目的は、各大学の特徴やカイロプラクティック教育のレベルを実際に自分自身の目で確かめるためです。 (次号に続く)アメリカのカイロ教育①松下順彦DC 興味深い研究が発表されました。MRIで確認された頚椎椎間板ヘルニアに対して高速で振幅が小さい脊椎マニピュレーション治療を施した3カ月間の追跡調査です。 頚椎椎間板ヘルニアを持ち、首痛と上肢の神経根障害を持っている平均44歳の患者50名が研究に集められ、最初の1カ月は週3回から5回、その後は無症候になるまで週1回から3回の治療を受けました。患者達は初回、2週間後、1カ月後、3カ月後に検査をPasadena Chiropractic CenterK. NAKAJIMA D.C.受け、数値で表す為に疼痛数量測定スケールと頚部障害指数が用いられました。治療は経験豊かなカイロプラクターがMRIで確認された箇所にマニピュレーションを施しました。 2週間後の検査では55・3%の患者達が、1カ月後では68・9%の患者が、そして3カ月後には85・7%の患者達が症状の大きな改善を見せ、症状が悪化したという報告は一つもありませんでした。 私達が一般的に治療する腰痛や頚部痛も、疼痛数量測定スケールや頚部障害指数で患者の痛みを数値化し、カルテに記述することも多く、整形外科テストなどでも患者の反応を記述します。ただある意味、これらの数値は主観的な数値と言えます。しかしMRIで椎間板ヘルニアの存在が証明され、症状と脊椎の分節が一致すれば、これは客観的な診断になり、その上で脊椎マニピュレーションをその分節に施すという追跡研究で多大な改善の結果が出たのです。このような研究はとても勇気付けられますし、これからもどんどん行ってほしいです。 こちらのカイロプラクティック大学は、教育という面だけではなく、研究という側面も持っています。私は臨床家として患者を治療する道を選びましたが、このような素晴しい研究を数々行っているDC達には頭が下がります。あとはこのような結果を臨床で実際に実行していき、人々に知らせていくのが私達臨床家の責任です。頚椎椎間板ヘルニアに関する研究

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