カイロタイムズ097号
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(4)2014年5月1日発行 カイロタイムズ 97号  今回より、GCJ主要メンバーである江川哲也先生、小野弘志先生、そして私の三人で、日本のカイロプラクティック業界、医療業界に役立つ情報をお届け致します。 国内で整形外科医であった私は、既存の現代西洋医学の形態では、人類の健康と幸福に貢献できないばかりでなく、人類を退化させてしまうという、強い危機感を覚えておりました。約10年間続けた整形外科医生活を終え、周囲の反対を振り切っての米国でのカイロプラクティック留学中、幸いなことに「ガンステッド・カイロプラクティック」に出会うことが出来ました。人間の根源を学ぶのに最も優れていると感じました。 ガンステッド・カイロプラクティックは、現代医学の全盛や、米国カイロプラクティック教育の現代医学化(診断、対症療法重視)の風潮の中、脊椎を通る神経の伝達能力を改善させることを原理とし、それを実践する、まさに砂漠の中のオアシスでした。「これだ!」と私の魂は躍りました。そして、全米で開催されるセミナーに多数回参加し、マウントホレブのガンステッドクリニックに幾度となく通いました。転校したパーマー大学では、ガンステッドクラブで、成就の難しいエグゼクティブメンバーに選定されました。 ガンステッドセミナーは、全米で最も歴史があり、最も純粋で強力な魂が宿っているセミナーです。やがて、このセミナーを日本で開催させたいと強く願うようになりました。何度も、セミナー代表であるドクター・ジョンに来日を懇願しました。実現するには、諦めない、めげない気持ちが必要でした。彼らから良い返事をもらえるまでに、約2年の月日を要しました。 第1回ガンステッドセミナー・ジャパンは、開催を願う熱い魂らのもと、2005年5月、盛大に開催されました。そして、その実現の陰には、セミナー事務局を受けて頂いた株式会社ネットおよび、同社社員故中原寿夫氏の大きな支援と功績があったことに言及いたします。 セミナーは、本年は充電期として休止となりますが、来年は生まれ変わった第9回セミナーで皆様にお会いしたいと考えています。のカイロプラクティック留学ンステッドクリニックに幾度ガンステッドセミナー   日本上陸の物語松久 正MD, DCGCJ代表 松 久   正鎌倉ドクタードルフィン診療所 院長日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティックガンステッドカイロプラクティック・オブ・ジャパン(GCJ)代表慶応義塾大学医学部卒業。パーマーカイロプラクティック大学卒業。最も習得が困難とされるガンステッド・カイロプラクティックをマスターし、ガンステッド・アンバサダーを授与される。その後も、人間が本質的に健康で元気になる原理を求め、量子学、エネルギー医学等を学び、自己の医療を新しいレベルに構築、身体のみならず意識を同時に修復、改善させることを目指す。人間が医療や宗教、他者に頼らず、自ら健康と人生を自由につくる世界を実現するためのセミナー「ドクタードルフィンセミナー」を積極的に開催している。松久 正(まつひさ ただし)MD, DC プロフィールし、教育に強い関心があり、結果的に、RMIT大学、マッコリー大学、マードック大学でのプログラム開発に関わることとなった。 1969年には政治に興味を持つようになり、1970〜2000年、豪州カイロプラクターズ協会で会長や理事を務めた。困難も多かったが、楽しい挑戦や成果もたくさんあった。州や政府によりカイロプラクティックに関する調査が何度も行われ、西オーストラリア州を除く全州で法制化を達成した。そして、世界初となる公立の高等教育機関におけるカイロプラクティックプログラムを設立した。 臨床、政治、教育の面で、この時期は私のカイロプラクティック人生においておそらく最も充実していた時代だった。 NSW州の田舎町の高校を卒業後、スポーツと演劇に一番興味があったものの、大学に進むことにした。1962年、将来的にある製鉄会社で働くことを前提とした奨学金を受け、ニューイングランド大学にて化学工業の勉強を始めたが、スポーツでの事故と運命が全てを変えた。ラグビー中の背中の怪我がもとで膵炎、最終的には糖尿病を発症した。しかし、大学卒業と同時に入社することになっていた製鉄業界は、当時、糖尿病患者を採用していなかった。 治療のために訪れたカイロプラクターは、おそらく周囲も全く予測しなかった方向へと私の進路を大きく変えた。糖尿病になってから6カ月程経っていたが、たった1回のアジャストで病気は完全に後退した。インスリン摂取を止めても、それから6カ月間尿検査で糖は検出されなかった。興味深いことだったが、医師は、一時的な後退は時々起こることであり、偶然にすぎないと言った。しかし、驚いたことに、6カ月後、検診のためにカイロプラクターを訪問し、またアジャストを受けたところ、24時間以内に重度の高血糖となり、インスリン治療に逆戻りした。以来、世界中の名だたるカイロプラクターからアジャストを受けてきたが、糖尿病には全く効果がない。もちろん、2つの出来事は全くの偶然だったのかもしれないが、カイロプラクティックや、その生体化学反応への影響について学びたいという知的好奇心を刺激され、奨学金を受け、カナダでカイロプラクティックを勉強することにした。 5年間家から離れ、カナダで過ごすことになったものの、当時16歳だった自分には遠いところに行けるということも魅力的だった。滞在中、故郷との連絡手段は手紙だけであり、金銭面の事情で帰国もできなかったが、すばらしい経験だった。入学を決めた当初は自分が選んだ職業に対する知識も全くなかったが、カナディアン・メモリアル・カイロプラクティック・カレッジを卒業する頃には、カイロプラクティックやカイロプラクター達を心から尊敬するようになっていた。 卒業後1年間世界中を旅行した後、シドニーなどで臨床をした。1968〜2000年は臨床に力を注ぎ、一時は6院を運営し、10名のカイロプラクターを雇用した。しかカイロプラクティックへの道(1)WFC初代会長 ジョン・スウィニーDC1968年カナディアン・メモリアル・カイロプラクティック・カレッジ卒業後、1979-1981年の豪州カイロプラクターズ協会会長職を含め、豪州国内および国際的にカイロプラクティック教育に関わる。大洋州カイロプラクティック教育審議会(CCEA)の前身組織や、国際カイロプラクティック教育審議会(CCEI)での活動を経て、現在CCEAのアクレディテーション委員会の委員を務める。1995-1998年WFCの初代会長であり、「カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHOガイドライン」開発の責任者。ジョン・スウィニーDC プロフィール 2013年6月の総会においてJACは役員を一新し、世代交代を印象づけた。一同に会した新役員に今後の方向性や、安全教育プログラムについて聞いた。 2020年までの法制化を目標に据えた。それに向け、2019年のWFC世界大会開催地への立候補を行った。実現すれば1997年東京大会以来となり、そこに参加するカイロプラクターを輩出すべく、3年間の新プログラムの開始も2014年と定めた。 新プログラムの修了者は、JCRの統一試験受験資格を取得し、試験合格により、WHO基準を満たしたカイロプラクターとしてJCRに登録されるという。 高い目標に基づくこれらの計画と行動は魅力的だが、新プログラムについての疑問を2点指摘したい。 まず1点目は、新プログラムは、WHO基準を完全に満たしているようには見えないことである。それをWHO基準の教育と呼び、かつ、修了者のうち、JCR試験合格者を安易に、WHO基準のカイロプラクターと呼んでよいのだろうか。WHO基準を満たしていないとする理由を以下に述べる。 まず、新プログラムの学習時間は、WHO基準より絶対的に少ない。WHOガイドラインのカテゴリーⅡ(B)「限定的カイロプラクティック教育」は、全日制もしくはパートタイムで2500時間以上(うち1000時間以上の臨床実習)の教育が必要とされている。 一方、新プログラムは、計約1800時間(うち臨床実習1500時間)。つまり、基礎医学などの学習時間は約300時間である。 次に、受講資格の曖昧さがある。ガイドラインでは、カテゴリーⅡ(B)の受講資格は、「適正なローカルプログラム(国際基準に満たないカイロプラクティック教育)の修了および、2〜3年間の臨床経験」とされているが、新プログラムの受講資格は、カイロプラクティック学習経験は必要としているものの、学習年数等詳細を規定していない。ローカル教育の質と量が教育機関により千差万別であることは周知の事実である。 ガイドラインには、カテゴリーⅡ(B)の教育について、「学士レベル」であるべきであり、「アクレディテーションを取得したカイロプラクティックプログラムとの提携を考慮すべきである」と記載されている。後者はTCCと提携しているため問題ないだろう。しかし、前者については、学習経験が不足しても受講を許可され、コース自体も約300時間の学習であるとすれば、果たして、「学士レベル」と言えるのだろうか。 JACにこの件を問い合わせたところ、カテゴリーⅡ(B)に準じた内容であり、WHO基準を満たす教育プログラムであるとの回答であった。また、WFC会長リチャーズ氏からも、プログラム内容については日本国内の状況に合わせてJACが決定すべきであり、WFCは介入すべきではないとのコメントを得ているとのことである。 2点目は、JCR試験の受験資格拡大の是非である。JCR試験受験資格はこれまで、TCCなど全日制正規カイロプラクティック教育修了者、およびJACが承認した一部CSCプログラム修了者に限定されていた。それを新プログラム修了者に拡大することに対しては、WHO基準の教育を受けた個人や団体を中心に反発が予想される。長年、WHO基準の教育の推進を掲げてきたJACの変節に対する批判もあるかもしれない。 業界代表団体として、業界の現状や将来、新プログラムの意義などを業界全体に説明し、理解を求める必要があるように思われる。同会が同時に進めるという、他団体との対話が鍵となるだろう。 とはいえ、業界の存続・繁栄のためには、新プログラムの目的でもある「消費者の安全」を保証することが重要であり、急がれる。そのためには、立場や意見の違いを乗り越え、業界が団結することが不可欠だ。若返った新生JACの行動力とリーダーシップに期待したい。 また、本記事内の新プログラムに関する内容は現時点での発表に基づくものであり、今後、開講までに解決されることを願う。弊紙96号(2014年2月1日発行)「オピニオン」

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