カイロタイムズ096号
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(6)2014年2月1日発行 カイロタイムズ 96号 米国に帰国し、WHOの件と、エジプトでの将来的な研究計画についてICA役員会に報告した。 翌年、ベニスとジュネーブ訪問後、 エジプトを再訪し、エズルディン医師と会い、1983年の合弁研究計画を策定した。そして、以前診た患者を全員診察する機会も得た。驚いたことに、前回のアジャストからほぼ1年経過していたにも関わらず、患者の大半は、めざましい改善を示していた。ただ、効果が出るまでに3〜6カ月の期間が掛かったのだった。 WFCが1989年に設立されて以降、WHOとの連携は主目的となり、1997年についに達成された。 ICAのメンバーとして、国際保健に興味を持っていたため、1980年秋にイスラエル訪問のための資金援助が発表された際、ICA役員会に申請した。イスラエル-エジプト間ではキャンプ・デービッド合意が進行していた。イスラエル政府の保健省役人と、カイロプラクティックに関する会合を持ちたいと思っていた。イスラエルにはカイロプラクターは5名しかいなかった。特使としての立場でエジプトも合わせて訪問し、役人と面会できるかICA役員会に問い合わせた。当時、エジプトにはDCがいなかった。経費は請求しなかった。 役員会は「特使」としての立場を承認し、私は出発した。最初に訪問したイスラエルで、保健大臣補佐官のショスタック氏に会う機会を得た。カイロプラクティックについて知っているか尋ねたところ、逆に、世界保健機関(WHO)におけるカイロプラクティックの位置づけは何かと聞き返された。知らないと答えた。それ以上議論は進まなかった。 翌週、エジプト保健省の役人と面会するためにカイロを訪れた。事前に約束していたのに、会合が実現しなかったため、役所のドアを順番に叩き、保健省の整形外科部門の長であるエジプト人医師(モー・タラート・エズルディン)と会うことができた。エズルディン医師からもWHOのカイロプラクティックに対する見解を質問された。カイロプラクティックの施術について私が説明したところ、大変興味を示し、自分のクリニックに招待してくれた。患者を診察し、研究について相談するためである。自分の患者のうち、重度の腰痛患者をクリニックに呼び、検査を手伝う整形外科研修医も用意してくれた。翌日、私は、20年以上慢性腰痛に苦しむ患者25名のレントゲンを撮り、アジャストをした。始まり3〜イスラエルとエジプトへの使節(3)WFC初代会長 ゲイリー・アナワバックDC 香港ではカイロプラクティックは免許制度になっていることを前回お話しましたが、米国で診療に当たる場合と同じ権限が与えられているわけではありません。大きな違いは2点あります。 まず1つ目の違いはレントゲンです。米国では自分のクリニックで撮影するのが一般的ですが、香港では自分で行うことはありません。これは日本と同じで、法律上、西洋医だけにレントゲン撮影が認められているからです。しかし、香港という土地柄、スペースを取ることができませんので、西洋医でも自分のクリニックにレントゲン設備を備えているところはありません。その代わり、レントゲンや血液検査などを行う専門のラボが多数存在し、そこで希望する取り方でレントゲン撮影をしてもらうことができます。 しかし、ここでも少し問題が起こります。ラボに頼めば撮影してくれるのですが、レントゲン技師は西洋医学の視点での教育を受けてきていますので、余程理解のあるラボでないと正確なカイロプラクティック用のレントゲンを撮ることができません。典型的なケースとして、私の患者さんもハイヒールを履いたまま撮影されたことがあります。 このような状況から香港では、カイロプラクターの判断で自由にレントゲン撮影依頼ができるものの、分析の多くの部分を画像の正確性に頼るテクニックは使いにくい状況と言えるでしょう。 2つ目は保険申請制度の違いです。香港では米国同様、公共の保険制度(日本の国民健康保険)は存在しません。しかし個人で保険に加入している場合は、保険会社(特に米国系の会社)の規定によりカイロプラクティックも保険適用されるケースがあります。 ここで米国でのカイロプラクティック制度と違うところは、西洋医からの紹介があった時のみ保険適用が可能という点です。ただ西洋医はカイロプラクターよりも理学療法士に紹介することが多いようです。これについては日本でも米国でも同じだと思いますが、理学療法士はあくまで西洋医の指導のもと治療を進めますが、カイロプラクターは独自の判断に基づいて治療できるからです。青 耕平DC香港と米国における違い 最後に、やはり香港でも政治的な問題はあります。香港医師会内では、カイロプラクターへの紹介状は書かないほうが望ましいという通達も出ていますし、保険の審査も非常に厳しくなってきています。このことと関係あるのか分かりませんが、最近カイロプラクターとしての就労ビザの取得が非常に難しくなってきています。  香港で登録されているD.Cは200人程で、日本の激戦区と比べれば多くはありません。しかし、政府がカイロプラクターの数を絞って来ている雰囲気があります。香港でも私達既存のカイロプラクターがもっともっと努力して正しいカイロプラクティックを社会に広めていかなければならないと強く感じています。1983年エジプト使節団 今回は、私のいるクリニックでのカイロプラクティック治療の流れについて簡単にご説明します。 グレニーグルス病院はパークウェイ・パンタイグループに属しており、アジア最大の病院経営グループの一つです。シンガポール人はもちろん、日々多くの患者さんが近隣諸国から来院しています。 私が所属しているのは病院内にある日本メディカルケアという日系のクリニックですので、患者さんは日本人がメインです。しかし、近頃はシンガポールの発展と共にシンガポール人の健康意識も変化し、現地人ならびにカイロプラクティック未発達地域(インドネシアを始めとする東南アジア周辺国およびロシア)の患者さんが年々増えて行っているのも目立ちます。 私の所に来る患者さんの年齢層は主に10代〜60代。腰痛や頚・背部痛、四肢関節痛の主訴の方が約8割を占めます。中でも最近は、頚椎由来の問題を抱えて来院される方が多いように感じます。残る2割の方々は、メンテナンスおよび産後の矯正などと思われます。 しかし、来院される患者さんの多くは、カイロプラクティック治療は初めてという方々です。その為、問診やレントゲン分析、患者さんの説明に時間を掛けるようにしています。特に初診時には会話にも時間を掛けて、少しでもリラックス出来る環境を作るように心掛けています。 私が行うのはHIO・ガンステッド・ディバーシファイドを主軸とした治療(治療時間は、新患を除くと一人当たり約15〜20分)ですが、カイロプラクティックの治療の前には、基本的にクリニック内で一般医での受診をして頂きます。 その後、病院内施設でレントゲン撮影(場合によってはMRI・CT撮影)をし、そしてカイロプラクティック治療となります。 また、当地ではレントゲン写真は保存義務が無いため、病院所属の放射線専門医のレポートと共に患者さんに返却します。(日本等への帰国時もフィルムをお渡しし、帰国後の継続治療に役立てて頂きます) 当地で12年間臨床を行っていますが、カイロプラクティックの治療前に、先に挙げたような過程を経ることにより、医師との連携も図りやすくなり、患者さんへの明確な説明がより可能になると感じています。シンガポールのクリニック齊田貴文DC 2009年5月12日に米財務長官が発表した公的年金と医療保険の基金に関する年次報告書で、「経済危機のあおりを受けて、高齢者医療保険(メディケア)は従来の試算より2年早い2017年に破綻し、公的年金は従来の試算より4年早い2037年に破綻する」との見通しが報告されました。 2010年11月16日に発表された米厚生省の監察官事務所の調査報告書によると、「米国の病院に高齢者向け公的医療保険(メディケア)を利用して入院した高齢者の7人に1人(13・5%)が投薬ミスや手術中のミス、院内感染などの医療事故の被害を受け、月に推計約1万5千人が死亡している」と報告しています。 米国の公的保険(メディケアやメディケイド)は、医療費を削減するため安く抑えている事もあり、医療機関での患者の扱いに問題が起こり易く、結果として医療事故に繋がっていると懸念されています。 一般の医療保険も恣意的な運営の所為で、米国の個人破産の原因の60%を医療費が占めていますから、オバマケアによって保険を持つ市民が増えても、その補償の内容によっては更に多くの医療事故や個人破産の増加を生む結果になりかねません。 今年2014年、米国では医療保険改革オバマケアが始動しました。しかし反対する人達もまだ多く前途多難なようです。 カイロプラクティックは、安全で効果的な、そして対費用効果に優れた医療ですから、オバマケア施行下でも、その存在意義を高められるように我々DCは日々の臨床に励んでいます。 今後、カイロプラクティックの本場アメリカから定期的に情報を提供して参ります。米国医療の現状松下順彦DC1988年 明治鍼灸柔道整復専門学校卒業 鍼師灸師免許取得1990年 同 柔道整復師 免許取得2003年 パーマー カレッジ オブ カイロプラクティック卒業2004年 カイロプラクティック哲学 LCP称号 取得2005年 Ace Chiropractic Clinicをシカゴ郊外で開業2008年 パーマー カイロプラクティック大学 顧問に就任2009年 カイロプラクティック哲学 DPhCS専門医 認定松下順彦(まつした まさひこ)DC, LCP, DPhCSプロフィール

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