カイロタイムズ096号
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(5)2014年2月1日発行 カイロタイムズ 96号 出産後の女性や更年期の女性に多いとされるこの「ドケルバン病」、最近では電子端末の使い過ぎでも発症するケースが増えています。 ドケルバン病は短母指伸筋腱と長母指外転筋が手首の背側にある手背第一コンパートメントを通るところに生じる腱鞘炎です。手首(手関節)の母指側にある腱鞘(手背第一コンパートメント)を通過する腱に炎症が起こった状態んだりして、さらにそれが刺激し、悪循環が生じると考えられています。特に手背第1コンパートメント内には、上記の2種類の腱を分けて通過させる隔壁が存在し、これがあるために狭窄が生じやすいのです。 診断は、上記の部位に腫脹や圧痛があり、フィンケルシュタインテスト(左記写真)で陽性になることで容易に診断することができます。 では、なぜ、この障害が起きる人と起きない人がいるのでしょうか?私の研究では、このドケルバン病は、指を屈曲して使う時に関節(MP関節)を伸展させて伸筋群を使ってしまうからだと考えています。その結果、あまり親指を使わない人でも生じることがあるのです。例えば、子供を抱っこする時に親指を屈曲して使えば、この腱に負荷はかかりません。しかし他の4本の指を屈曲して使い、親指だけ使わないとしたら、親指は伸展位にあります。この現象がドケルバン病の正体であると考えます。 このメカニズムを考慮に入れ治療を進めるとより効果的と思われます。また、この障害が起きた時には先ほどの二つの腱には癒着が存在することが多く、グラストンテクニックの併用が治癒を早めると考えています。(参考資料 日本整形外科学会)で、腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側から手首にかけて痛み、腫れる場合もあります。母指や手首を広げたり、動かしたりするとこの場所に強い疼痛が走ります。 主に、この腱を使いすぎたことが原因ですので、最近ではパソコンのキーボード操作やマウス操作、そしてスマホを使う方にも多く発症しているということのようです。 病態としては、母指の使い過ぎによる負荷のため、腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷フィンケルシュタインテストドケルバン病の研究 60代の男性は、初診時の2年ほど前から右下肢後面と足背に痺れがありましたが、半年ほど前から、高血圧と不眠症(中途覚醒あるいは早朝覚醒)を発症させ、降圧剤と複数の睡眠薬を服用し始めました。  薬を内服するようになって2ヶ月後ぐらいから、右下肢後面の症状が悪化し、1ヶ月ぐらい前からは、両手両足の痺れ(肘から先と膝から先、いわゆる多発神経炎の特徴であるグローブ&ストッキング型の感覚異常)、だるさと気力の低下も始まり、当院を訪ねて来た時は全く覇気のない表情をしていました。付き添いのご家族によると、元来、自分で商売を立ち上げるほど、エネルギッシュで強気の方だったとのことです。 この方の場合、最も効果があった治療?は、薬をやめたことです。私は、薬の影響が強そうだねということを伝えました。時間をかけて少しずつ減薬できればと思っていたのですが、その説明に本人は何か感じることがあったのか、スパッと服薬をやめてしまいました。すると、驚いたことに、リバウンドもなく、みるみる元気になり、ひと月も経たないうちに元通りのエネルギッシュな本来の姿に回復しました。 もちろん、カイロプラクティックによる治療も有効だったでしょうが、劇的に痺れが消え、だるさもなくなり、気力も回復したのは、薬を中止したからだと思われます。  とはいえ、 減薬・脱薬は、1つ間違えればトラブルになりかねない繊細な問題を含んではいますので、細心の注意が必要です。なお、私は、薬の影響の有無を考える時に、タイムラインを活用して頭を整理しています(図をご覧下さい)。日本カイロプラクティックカレッジ卒業豪州公立マードック大学卒 Bachelor of Health Sciences in Chiropractic横浜天王町カイロプラクティック院長1993-2007年 日本カイロプラクティックカレッジ講師1994年    日本カイロプラクティックセンター天王町(現横浜天王町カイロプラクティック)を開院2006年    徒手医学の可能性を追求するため応用身体運動学研究所を設立       神田西口整骨院開院2010年    横浜・天王町接骨院を併設蔀 祐司(しとみ ゆうじ)プロフィール薬をやめたらみるみる元気に薬をやめたらみるみる元気に蔀   祐 司 去る11月2〜4日、第13回JACシンポジウムが開催され、WFC会長のデニス・リチャーズ先生による基調講演、ライフ大学スポーツ科学研究所所長のジョン・ダウンズ先生による臨床セミナーは盛況に終わりました。 また、期間中に行われたJAC役員との会談において、リチャーズ先生にはWFC会長の立場から、今後の安全教育プログラムの実施についてご支持を頂き、FICS(国際スポーツカイロプラクティック連盟)理事でもあるダウンズ先生には、ICCSP(国際公認カイロプラクティックスポーツ専門家)コースの方針についてもご支持を頂きました。 前号のインタビューでも申し上げた「安全教育プログラム」は、国民生活センターによる「手技による医業類似行為の危害」報告に対する「安全性と広告に関するガイドライン」発表を次ぐ政策です。 WHOガイドラインの教育基準を満たしていない方を対象に、基礎医学など必要とされる安全教育を行い、第三者評価機関であるIBCE(国際カイロプラクティック試験委員会)の受験資格を得られるためのプログラムです。 IBCE合格者は、WHOガイドラインの教育水準に沿った、日本独自ではないカイロプラクターを意味し、JCR(日本カイロプラクティック登録機構)の名簿に登録されることで、国際的なカイロプラクティック学会やセミナーに参加できるようになります。 また、スポーツ分野では、ICCSP資格取得者はオリンピック選手のケアなど、今後の活躍の場が広がることが期待されています。2008年 RMIT大学カイロプラクティック学科日本校(首席)卒業2008年 RMIT大学カイロプラクティック学科日本校(現東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック)非常勤講師2009年 JAC関東甲信越ブロック幹事長2011年 カイロプラクティックパリナーマ茅ヶ崎院長2013年 JAC副会長岡 大(おか まさる)JAC副会長プロフィールJAC副会長 岡     大カイロプラクティックに携わる  全ての人の発展のため このようにJACは現在の複雑な国内事情を国際的な基準と擦り合わせながら、カイロプラクティックに携わる全ての方がともに発展できるように努力してまいります。岡 大 副会長 グラストンテクニック(GT)の手順として、先ずウオームアップエクササイズで全身体、又はホットパックで局所を温め、インストルメントによるスキャン・同定・施術を行います。その直後にストレッチを行い、反復運動と必要に応じてアイシングを行うというプロトコルがあります。施術計画は、週2回を4〜5週間としますが、ほとんどの患者さんは3〜4回目迄に良い反応を実感します。 施術期間中、可能な限り安静を避け、日常生活やスポーツの現場で無理のない程度に継続的に活動することが推奨されます。足底筋膜炎やシンスプリントが運動を止めずに回復してゆくことに眉をしかめる方も珍しくありませんが、新生線維の整列編成には不可欠な信号を提供する「ウルフの法則」として軽負荷高反復運動は重要な役割を担います。 長年のGT統計データによると、施術した75〜90%の病態において良い結果が得られており、アキレス腱症・足関節捻挫・足底腱膜症・膝蓋大腿症候群・頚部痛・腰痛・線維筋痛・股関節痛・ハムスト痛・腸脛靭帯症候群・外内上顆症・肩板症・手根管症候群・手腕腱鞘炎の順に多く施術されています。 GTは線維化巣の解消や筋ファシア拘束の解放だけでなく、修復再編の主役であるコラーゲンを産生する線維芽細胞を局部に誘致することが判っており、また固有受容器を含む感覚受容器への刺激を通して精神運動制御や中枢性及び末梢性感作の制御という側面も持ち合わせています。これらの多様な目的毎に適したストローク・インストルメント・圧や接触角や肢位等施術パラメターを微妙に変える作業が伴います。 これら多様な効果を最も必要とするのはやはりエリートアスリート達であり、ケガの早い回復から日々のパフォーマンスコンディショニングまで、GTを活用しており、アメリカではNBAバスケ・NHLアイスホッケー・NFLアメリカンフットボール・MLBメジャーリーグベースボール・USOTCオリンピックトレーニングセンターで標準的手順として、日本でもバレーボール・アメフト・バスケ・陸上・ラグビー・水泳・新体操そしてプロ野球チームに導入されています。「グラストンテクニックの実際」AABBCCA.健全なMCLB.施術を受けなかった4週間後の靭帯C.グラストンテクニック施術を受けた4週間後の靭帯

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