カイロタイムズ096号
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(4)2014年2月1日発行 カイロタイムズ 96号第15回学術大会山口創准教授(桜美林大学)日本カイロプラクティック徒手医学会ここちよい振動が皮膚に起こることが解明されている。 「触れ合うことで脳内にオキシトシンが分泌されます。オキシトシンは愛着を築くホルモンだと言われていて、末梢器官や中枢神経で働きます。さらに、不安や恐怖をやわらげ、ガン細胞を抑制する働きがあることがわかっています」と皮膚へのアプローチがいかに有効であるかを解説した。 特別講演では東京大学大学院の山本義春氏が「生体のゆらぎとその役割」を、ワークショップではカリフォルニアポートビーチオフィスの吉沢公二氏が「臨床機能神経学について」「発達障害治療について」をそれぞれ講義した。一般講演は、荒木寛志(フィニッシュカイロプラクティック研究所)、湯原健吉(白金整体院)、伊藤彰洋(伊藤カイロプラクティックオフィス)、土井武志(土井治療院)、石井秀典(中川カイロプラクティックオフィス)、稲見暁惠(東北大学サイクロトロン核医学研究部)、安達智江(安達クリニック)、今村優汰(サレジオ工業高等専門学校専攻科生)、中川達雄(中川カイロプラクティックオフィス)らが登壇した。「臨床の落とし穴」と題したパネルディスカッションでは、大場弘氏、馬場信年氏、守屋徹氏らがパネラーとなり議論を深めていった。 2013年11月9日(土)と10日(日)の2日間、品川区立総合区民会館「きゅりあん」で、日本カイロプラクティック徒手医学会の第15回学術大会が開催された。 吉岡一貴大会長は「そもそも学術的な活動に壁を作ってはいけません。問われるのはその妥当性のみ。そう考えてみますと、所属や立場、学歴、資格等に関する個人的な背景、そして年齢も技量も流派も越えた自由な学術的議論を目的とした唯一の聖域として在る、ということこそが、複雑な事情を抱える日本の中での本学会の最大の意義なのではないかと、あらためて思うのです」と挨拶で語った。 基調講演は桜美林大学の山口創准教授が登壇した。「皮膚と心『第3の脳』としての皮膚の役割」と題して、身体接触による治療の有効性やオキシトシンの働きなどを講義した。皮膚は音をキャッチすることができるし、耳で聞こえない低周波や光などもキャッチする。つまり五感のはじまりは皮膚からである。さらに皮膚をなでると1/fのゆらぎという人間にとって第43回ダイレクトテクニック仲井康二DC, CCSP 眼は外部からの光による情報を受ける感覚受容器で、眼窩と呼ばれる頭蓋骨(7種類の骨)で形成される深いくぼみに収められている。ヒトは外部からの約80%の情報を眼から得ていると言われている。成人の正常な眼球は直径約24mm、前後径は23~25mm。眼球の後方には、神経の束(視神経)がついており、クワイの根っこに似ている。 角膜は眼球の前中央にある透明な膜で、強膜から移行したもので、眼球壁の約1/3を占めている。角膜は直径約10~12mm、厚さは約1mmで中央部は少し薄い。角膜に触れると眼輪筋の収縮が起こり、反射的に眼を閉じるが、この現象を角膜反射と呼ぶ。昏睡状態になると、この反射が消失する。人工麻酔において全身にある多くの反射の中で、最後に消失する反射であるため、麻酔進度の判定に利用される。 角膜はレンズを保護する機能と、光を屈折する無色なフィルター様相で、水晶体は弾力性を備え、周囲を取り囲む毛様体の平滑筋(第Ⅲ脳神経:副交感神経支配)が伸縮するのに合わせて、厚さを変えて焦点を合わせている。角膜には血管や神経が分布していないため免疫反応が少なく、拒否反応が起こり難い。 虹彩は眼球に入る光の量を調整する。虹彩は一般に言うヒトミ(瞳)の一部分にあたる。白眼の部分は、眼球壁の最外層にある強膜の前方部分となる。白色なのは強膜には血管が少なく、主に膠原組織からなり、それが眼球結膜を透して見えるからである。 水晶体はカメラのレンズに似て、透明で前後に凸面を備えた硬い構造をしており、内側は水晶体上皮と水晶体線維で構成される。水晶体は前面よりも後面の彎曲が強く、曲率半径も後面が約10mmで、前面が約6mmとなる(図1、2)。 虹彩の中央には、黒色の円形の孔があり、この部分を瞳孔と呼ぶ。瞳孔の大きさが瞳孔散大筋(交感神経支配)の作用により、大きくなることを瞳孔散大(散瞳:4mm以上)と呼び、瞳孔括約筋(動眼神経支配)の作用で小さくなることを縮瞳(2mm以下)と呼ぶ。遠くを見るときは散大して、近くを見るときは縮小する反射を輻輳(ふくそう)反射と呼ぶ。また瞳孔に光をあてると反射的に縮瞳する反射を対光反射と呼ぶ。正常であれば、片側に光をあてると反対側も縮瞳する。これを共感対光反射と呼ぶ。 視細胞には大きく2種類あり、強い光と色調を感じる錐状体と、弱い光と色調は感じ取れないとされている扞状細胞が含まれる。両細胞の分布は網膜の部位によって異なり、網膜後方の中心付近の黄斑の中心部の陥凹部(中心窩)付近には、錐状体が多く含まれる。 網膜に届いた光は電気信号に変えられて、視神経を介して視床の外側膝状体に運ばれる。内側半分は視交叉で反対側に交差する。電気信号が外側膝状体から視放線を介して、大脳皮質の視覚野に達して、初めて見えるという感覚が生じる(図3)。中心窩より外側(側頭側)の視神経は、脳と同側に連結する。反対に中心窩よりも内側(鼻側)の神経線維は、視交叉で反対側に交叉する。左視野は両網膜の右半分に反応して、上方視野は、網膜下方に対応するので注意する。 眼を動かす筋は3対あり、脳神経(動眼神経:CN Ⅲ、滑車神経:CN Ⅳ、外転神経:CN Ⅵ)が司る(図4)。眼を閉じたり、開いたりする作用も、脳神経(開く:動眼神経、閉じる:顔面神経:CN Ⅶ)が司る(図5)。 眼窩の内側の目尻に近い部位に涙を流す涙腺が位置する。涙には抗菌物質が含まれ、眼瞼と角膜への潤滑油の機能も持ち、また異物を押し出したり、感情を表現する時にも使われる。 今回は随分と眼の基礎医学の説明が長くなったが、これからのカイロプラクティックは、脳科学と密接な繋がりが増えていくと思われるため、出来るだけ眼に関する情報をご紹介しようと試みた。 アメリカではキャーリック財団が中心になって、カイロプラクティック神経専門医のコースが開かれている。その神経専門医の資格を持つ人の検査を見ていると、眼や耳を使った検査が数多く用いられているのが分かる。   脳科学では、眼や耳、そして嗅覚を司る鼻は、脳の一部として研究が進められている。これからは視野や聴覚、そして嗅覚を利用しながら、色々な脳に関わる検査が開発されていくと予想される。 特に眼は、脳との繋がりが深いので、新たに色々な検査方法が作り出されていくと思う。自分が参加していたAK(アプライド・キネシオロジー)協会も、眼を使った検査が多くあった。これからの医学は、個々の専門分野に偏ることなく、同時進行で発展していくのだと思う。カイロプラクティックも置き去りにされることなく、最新科学に同乗しながら発展することを祈っている。 確かに眼は面白い。“眼は顔程に物を言う”との格言があるが、眼から得られる情報は多い。 また視力低下の恐ろしさを身を持って経験している。自分は“眼だけは丈夫”だと自負していた。40歳頃まで両目の視力は2.0に近かったと思う。それが40代後半から一気に低下していき、50歳を超えると、特に夕方になると本が読み難く、歩いていても段差がうまく見えずに、爪先が引っかかったり、踏み外すことが多くなった。急激な視力の低下が原因だと思う。今ではPCのモニターも見え辛くなり、老眼鏡をかけるか、よほど拡大しないと分からない程だ。辞書も読めないし、文庫本も眼鏡なしでは読めなくなってしまった。情けない限りである。 一方で当オフィスには90歳を超えた方がいらっしゃる。ある女性(92歳)の方に伺うと、60~70歳のころは虫眼鏡がないと読めなかった新聞が、何時の間にか裸眼で読めるようになったと言う。周りの人に聞いてみると、ある方の95歳を超える父親は、薄暗くなった夕方でも、裸眼で新聞を読んでいるそうである。驚いた。おそらく長生き遺伝子というものが存在して、長生きできる人は、ある年齢になると長生き遺伝子がスイッチオンして、視力が回復するに違いない。 また今までに数名が主訴以外に疲労感を訴え、白眼を覗いて見ると、黄色によどんでいた。血液検査を勧めると、多くの人がB型肝炎であった。中には母親がキャリアで、遺伝していた人もいた。 眼は多くの情報を提供してくれる。その情報を見逃さずに、明確に察知できる能力と観察力を備えたいものである。第2頚椎眼1.上結膜円蓋2.角膜3.眼球結膜4.下結膜円蓋5.水晶体6.虹彩7.網膜8.瞳孔1.虹彩       8.黄斑(中心窩含む)2.前眼房      9.視神経乳頭3.後眼房     10.毛様体小帯4.毛様体     11.眼球結膜5.網膜      12.結膜輪6.脈絡叢     13.角膜7.強膜1.視神経2.視索3.視放線4.視交叉5.外側膝状体1.上直筋(CN Ⅲ)2.上斜筋(CN Ⅳ)3.滑車4.内側直筋(CN Ⅲ)5.下直筋(CN Ⅲ)6.下斜筋(CN Ⅲ)7.外側直筋(CN Ⅵ)閉じる開く(図1)(図2)(図3)(図4)(図5)

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