カイロタイムズ096号
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(3)2014年2月1日発行 カイロタイムズ 96号【はじめに】 「イップスは精神的な原因によりスポーツの動作に支障をきたし、自分の思い通りのプレーができなくなる運動障害のことである」(ウィキペディア) イップスはゴルフや野球で有名だが、ピアノなど楽器演奏する際にも起きる。イップスの治療法は確立されていないので早期回復は困難である。野球はポジションの変更、ゴルフはフォームの矯正などハード面のアプローチで改善を試みるが思うようにならない。 今回の症例は心身条件反射療法(以下PCRT)で「潜在的な自分」と「意識的な自分」にスポットを当て早期改善した報告である。【患 者】 女性 37才 主婦【主 訴】 トロンボーンが吹けない【病 歴】 10月頃よりトロンボーンが吹けなくなる。【症 状】 マウスに合わせて唇をコントロール出来ない。長く呼気ができない。 呼気障害や唇運動障害が機能障害か病的障害なのか脳神経学検査を行う。検査は三叉神経、顔面神経、舌咽神経、舌下神経を行った。顔の症状、舌運動全て陰性。通常の深呼吸陰性。 PCRT検査で「症状イメージ」で「脳の誤作動」のスイッチを入れることで陽性反応がみられる。脳神経学とPCRT検査で機能障害であることが判明。【初回施術の流れ】吹けない↓少人数の演奏↓感情:優越、義務 患者さんに「吹けない」イメージをしてもらい「どんな場面」で反応するか検査をする。「少人数の演奏」で陽性。感情「優越 有名な先生に習っている。義務 仕方なしに入った」で陽性。PCRT調整を行う。【2回目施術の流れ】吹けない↓少人数の演奏↓感情:不安、焦り 2回目の来院で「場面 少人数の演奏」で陽性が残っていたので感情を探る。感情「不安 このまま吹けなくなる、焦り 発表に間に合わない」で陽性。PCRT調整を行う。【3回目施術の流れ】吹けない↓少人数の演奏↓陰性吹けない↓人間関係↓二人の特定の人↓感情:連帯、不安 3回目の来院で「場面 少人数演奏」陰性。「吹けない」イメージで陽性。新たに「人間関係」で陽性。人間関係の感情「連帯 共感してくれる、不安 メンバーから外される」で陽性。PCRT調整する。【4回目施術の流れ】吹けない↓特定の人↓陰性吹けない↓感情 不安↓質問「何が不安なんですか?」(音楽家として周りの目がきになる自分)不安が明確になる。 「不安」や「恐れ」の感情は「何に対して不安・恐れ」なのか明確に認識できないことが「不安・恐れ」を増幅していることが多い。コーチングで「何にが不安」なのか明確になり認知でき、潜在的なもう一人の自分を発見できる。調整後は表情が緩み会話にも「吹けそうになってきた」という言葉が出てきた。【5回目施術の流れ】音楽家として周りの目が気になる↓陰性吹けない↓感情:意欲、劣等 5回目の来院時の検査で「不安」は陰性。再度「吹けない」で陽性。感情で「意欲 プロのように上手くなりたい、劣等 基本ができないとダメ」で陽性。「〜べきだ」「〜ではなければダメだ」は意志的感情で「信念」や「思い込み」が影響している。調整は緊張パターンとリラックスパターンで調整する。リラックスパターンを見つけるのにコーチングで質問して気づいてもらう。 緊張パターンは「技術で練習」、リラックスパターンは「感性で練習」で調整する。調整後に「吹けない」症状をイメージしてもらい、陰性が確認できた。実際にマウスピースを吹いてもらい長い呼気、唇の感覚、動きは正常に戻る。【6回目施術の流れ】 来院時に症状の確認をする。実際にトロンボーンを吹いても以前のように吹ける。5回までの総チェックをして確認する。全て陰性反応。音が出せるように吹くことができたので6回目からはレベルアップのメンタルブロックをチェックして技術的、精神的にも向上「トロンボーンが吹けない 楽器イップス」症例報告3-Ⅳ 心身条件反射療法協会するような調整を行っていく。【考 察】 イップスは精神的影響で身体の運動障害を引き起こすと言われているが、精神的影響が身体動作の障害を引き起こすメカニズムは解明されていない。    メカニズムを考えるとすれば、身体動作は髄運動と不随運動の協調性である。また「意識」と「無意識」の協調性でもある。行動計画は意識的に意図され、行動計画を起こすための身体動作は無意識的な反射系で動く。 例えば、目的地に行く「行動計画」は意識で、「歩行動作」は無意識(反射)である。歩行動作の四肢の関節運動は主動筋と拮抗筋の相反神経支配である。この相反神経は無意識(反射)の状態で正常に働き、ここに意識が関与すると相反神経支配は機能異常を起こして、主動筋と拮抗筋が同時収縮を起こす「共縮」という現象が起きる。「共縮」現象時には関節運動は機能しなくなり、身体動作は遂行できない。 スポーツや楽器演奏で「OBを出さない」「見られている」「負けたら優勝できない」「上手く吹こう」など意識が働くと相反神経支配の協調性が乱れて「共縮」現象が起き、身体動作が思うように動かなくなり「イップス」が起きると推測される。 「勝ちを意識しない」などよく言われるが、幾度となく繰り返される緊張場面で学習記憶され、意識レベルに想起して大事な場面やここぞという時に「脳の誤作動」のスイッチが作動すると考えられる。 イップス治療は確立されていないが、PCRTで「心と身体」「脳の誤作動」の関係性から見ると特別な障害ではない。カイロプラクティック・コンディショニング・ルームK 菊 地 光 雄 B.C.Sc 戦国時代、天下を取るだけの技量をもち合わせた武将は信長だけではなかった。武田や毛利、上杉なども可能性はあった。黒田官兵衛もそのひとりとして恐れられた。官兵衛は信長の将来性をいち早く見抜き、主君の小寺家と縁を切り、信長の家臣だった秀吉の軍師になる。官兵衛の才知は天下人となった秀吉も認めていたが、同時に「次の天下を狙う男」として警戒される。そのことを知るや、官兵衛は44歳の若さで息子に家督を譲り、あっさりと出家して如水と名乗る。官兵衛の最大の欠点はここにあった。天下を取ろうという野心がないのである。しかし、官兵衛を信長、秀吉、家康の三英傑よりも人物的には勝っていると評価する者もいる。 小寺氏に仕えていた20代のころ、官兵衛のいた播州(姫路近辺)は平和そのものだった。西方の中国毛利は、播州を軍事的に征服しようという気配はない。京を支配していた三好・松永勢は播州まで手を伸ばす力を持ち合わせていない。織田家が勢いを得ていたが、まさか播州まで入ってくるとは誰も考えていなかった。この時、官兵衛だけが織田家に注目していた。「つかの間の安らぎにすぎない」と見ていたのである。小寺家の他の家臣たちが退屈な毎日を送っているのに対し、官兵衛は各地に足を伸ばして情報収集に余念がなかった。官兵衛はどんどん出世していったが、戦国の世であることを忘れ平和ボケした家臣たちの末路は悲惨なものである。平和なときこそ情報収集が大事だということだ。真田 秀政に連れて行ってくれました。当時、カイロプラクティックが何かも知らなかったのですが、私には効果がありました。その後、大学に進学し、生理学を学びました。卒業後、数名のカイロプラクターに話を聞き、よく考えた結果、米国パーマー大学への進学を決めました。パーマーはカイロプラクティックにとって特別な場所であり、雰囲気もよく、とても楽しかったです。編集部 特に力を入れていきたい分野や国はありますか。R氏 世界の大半のカイロプラクターが北米・欧州に集まっているために、WFCもその地域を重視する傾向にあります。個人的には、アジア、南米、アフリカといったそれ以外の地域に注目してもらいたいと思っています。特にアジアは将来、経済的にも政治的にも世界で重要な地位を占めるでしょうから、この業界にもそれが反映するだろうと思っています。WFCはアジアにもっと注意を払うべきだと思います。また、日本は大変発展していますからアジアのリーダーになり得ると思います。編集部 「発展」とはカイロプラクティックの面でですか。R氏 はい、カイロプラクティック的にも経済的にも両編集部 昨年会長に就任されてからの感想を教えてください。リチャーズ氏(以下R氏) WFCの代表として世界中の同僚と交流ができ、大変充実しています。編集部 なぜカイロプラクティックの政治の分野に関わろうと思われたのですか。R氏 この業界は、時に、臨床に重点を置き過ぎ、何か問題が起こってからそれに対処しがちです。そうでなく、事前に計画を立て、主体的に行動する方がよいと思うのです。同じ理由で、現職の前にも、豪州カイロプラクターズ協会(CAA)の会長を4年間務めました。編集部 カイロプラクターになろうと思った経緯を教えてください。R氏 高校卒業時、医学も検討してはいたものの、進路を決めかねていました。その頃、夏休みの肉体労働のアルバイトで怪我をしてしまいました。なかなか良くならなず、両親がカイロプラクティック方です。日本にはアクレディテーションを取得したプログラムがあります。日本がアジアのカイロプラクティックのリーダーになっていくと思います。編集部 アクレディテーション取得プログラムという意味では韓国ハンソ大学、マレーシアIMUもありますよね。しかも、日本のTCCが政府に認可されていない私塾であるのに対して、2校はそれぞれの国において認可された教育機関です。それでも日本がリーダーになれるでしょうか。法制化されるためには、国に認可された教育機関による学位が発行される教育が必要ではありませんか。R氏 それは重要ですね。日本には解決していかなければならない問題がたくさんあり、これもその一つです。しかし、重要なのはTCCと業界全体が前進し続けることです。 大きな大学の中の一部として提供されるカイロプラクティック教育が大学の都合に左右されるのに対して、私立の教育機関による教育は独立を保てます。TCCは、バルセロナ・カレッジ・オブ・カイロプラクティックとスペインの公立大学のように、学位を発行できる大学と提携することも可能でしょう。またTCCは、リサーチを通じて、教育基準を引き上げることができるでしょう。 業界としては、第三者機関により運営されている日本カイロプラクティック登録機構(JCR)の統一試験を、政府との交渉材料とすることができます。編集部 西洋と異なり、アジアには、カイロプラクティック以外にも、柔道整復、按摩、鍼灸などたくさん手技療法があります。その中で、カイロプラクティックが生き残っていくにはどうすればよいと思われますか。R氏 西洋では、科学に基づく「西洋医学」と、カイロを含む「代替医療」に分かれます。東洋では、カイロプラクティックは両者のよいところを取ればよいのではないでしょうか。つまり、教育やリサーチの分野では西洋医学の高い基準を利用し、思考は代替医療の考え方を持ち続けるのです。しかし、地位としてはセラピストではなく、ドクターであるべきだと思います。 カイロプラクティックほど高い教育レベルを持つ代替療法はおそらく他にはないと思いますし、政府と話す際にこの事実を利用できます。私の奢りかもしれませんが、カイロプラクティックが代替医療のリーダーになって欲しいと思っています。教育とリサーチの分野で代替医療を先導できれば、リーダーになれる可能性があると思います。編集部 それではカイロプラクティックのアイデンティティーが失われる可能性がありませんか。R氏 その危険はあります。だからこそ、カイロプラクティックは「哲学」をとても明確にする必要があるのです。編集部 最後に日本のカイロプラクターに対してメッセージはありますか?R氏 皆さんにはスピリットがあります。しかし、業界の将来に不安をお持ちのように感じます。成功には長い時間が掛かることがあることを理解して、頑張って頂きたいです。 JACシンポジウムでの講義のために来日した世界カイロプラクティック連合(WFC)会長デニス・リチャーズ氏に、職務への抱負や、アジア地域のカイロプラクティックについて意見を聞いた。リチャーズWFC会長カイロプラクティックには 哲学が必要WFC会長リチャーズ氏インタビュー

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