カイロタイムズ118号
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(4)2019年8月19日発行 カイロタイムズ 118号 スコット・ホルドマンDC、 MD、PhDが示したカイロプラクティック研究のための4つの評価基準で、前回は基準1をご紹介しました。次の基準2では、「特定の施術プロセスはそれが適用される筋骨格系に特定の効果を発揮しなければならない」と述べられています。この基準を満たすアクティベータ関連の論文を3つほどご紹介させていただきます。一つ目は2000年に「メカニカルフォースの活動の減少」(Jim DeVocht PhD, Wally Schaeer, DC)というタイトルで、「アクティベータ・アジャストメントは筋スパズムを軽減させ、電気生理学的変化を引き起こす…」と述べています。三つ目の論文は後向き調査の症例シリーズで、「自動車衝突後のカイロプラクティックケアを受けている患者における横方向頚椎カーブの変化」というタイトルで、アクティベータ器によるアジャストメントとストレッチエクササイズの指導によって、頚椎カーブの術前術後の変化は平均で6.4度増加したと報告されています。 次は基準3です。基準3では、「施術によって引き起こされる筋骨格の影響は、神経系に特定の影響を及ぼすことが示されなければならない」とされています。この基準を満たした研究は2000年に「外科手術中における腰仙部脊椎マニピュレーションに対する神経生理学的反応」というタイトルで、アクティベータ器によるアジャストメントの神経学的反応が記録され、その成果が発表されました。本研究で興味深かったのは、生体内と生体外のスラストの結果、混合神経根活動電位の振幅に差があることでした。 外科医との共同研究でおこなわれ、L4‐L5椎弓切除術の際に、脊椎を露出させた状態でL5乳頭突起にアクティベータ器で振動を加えた生体内の混合神経根記録と、通常に行われる皮膚の上から生体外の混合神経根記録の活動電位振幅を比較したところ、脊椎に直接コンタクトして振動刺激を加えるよりも、筋肉や脂肪組織などの軟部組織を介して振動刺激を加えた脊椎矯正は、筋電計による体幹筋力を増加させる」(Colloca CJ, Keller TS)というタイトルでJMPTに掲載されました。この論文では「アクティベータ器によるアジャストメントによって筋力を22%増加させた」と述べています。 二つ目は2002年の国際腰痛学会でポスタープレゼンテーションとして掲載された論文「脊椎マニピュレーションにおける傍脊柱筋の筋電図AMリサーチに関して③保 井 志 之 DCVol.20方が活動電位振幅の数値が高く示されていました。通常、神経系への振動刺激は、肥満体型の人よりも痩せ型の人の方が伝わりやすいのではないかと思われがちですが、この研究データではスラスト振動はむしろ肥満型の人の方が伝わりやすいことになります。臨床においても肥満体型の患者さんでも問題なくアクティベータの振動刺激が十分に伝わり、その結果として陽性反応は消失しており、この研究成果がそのことを裏付けてくれたと感じました。(その4に続く)するホルモンが、精神状態や疼痛と関連するというのは、なんとなく理解できますね。オステオパシーの哲学には、人はbody・mind・spiritの三位一体であることや、医療者の仕事は病気を探すことではなく健康を見出すことであるということが含まれています。治る力は全て、すでにその人の中に存在しているということです。オステオパシーに限らず、様々な分野の知恵を学びながら、それを見出していきたいと考えています。ますと、オステオパシーの教育を受けている時に、特に「天気痛」対策について習った覚えはありません。ですから、これはただの仮説ですが、前述のような話を考慮すると交感神経を抑制するリブレイジングなどの手技や、隔膜や頭蓋、静脈洞などへのアプローチによるリンパ流の改善などが「気象病」「天気痛」に有効な可能性もあると思われます。 ところで、一般に「愛情ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、乳汁分泌、子宮収縮の他、社会性の育成、食欲抑制、抗炎症、鎮痛の作用を持つとされており、近年、慢性疼痛への効果も研究されています。また、不眠や神経症などに用いられる加味帰脾湯という漢方は、オキシトシンの分泌を促すと報告されています。社会性や絆形成と関係 先生方も、天候の崩れによって症状が強くなる慢性疼痛のクライアントさんを、よく経験されるのではないかと思います。「気象病」、「天気痛」などと呼ばれる疾患には、めまい、頭痛、肩こり、腰痛、関節リウマチ、変形性関節症、三叉神経痛などが挙げられ、関節リウマチ患者の疾患活動性が、気圧低下時に上昇するという疫学的な研究がされています。 天気痛のある人たちを実際に気圧変化や温度変化に曝露し、天気痛が再現されるのを調べた報告もあります。また、天候の変化に影響されるのは人間に限ったことではなく、マウスの実験でも同様の結果が認められます。とくに、悪天候時には身を隠さないといけない小動物や鳥類では、気圧変化をよく感知するようです。 天気痛の機序には、気圧や温度の変化に対する自律神経の変動が挙げられており、気圧センサーは内耳の三半規管に存在している可能性がある星野 優子NPO法人アトラス・オステオパシー学院講師整形外科専門医日本手外科学会専門医星野 優子 プロフィールとされています。気圧低下による内耳からの情報が脳幹の前庭神経核に入力され、自律神経中枢や内分泌系に影響しているのではないかと考えられています。 漢方医学では、気血水の乱れや冷えが慢性疼痛と関連するといわれていますが、特に天気痛やめまいと、水滞(水が滞り、体液が偏在している状態で、下腿や舌の浮腫が見られる)は関連しているとされています。天候に左右される神経痛やめまいには、五苓散などの水をさばく漢方が有効な場合があります。めまいは内耳のリンパと関連するとされていますので、気圧変化により内リンパの変化が生じているのかもしれませんね。 少しオステオパシーの話もし天気痛NPO法人アトラス・オステオパシー学院星野 優子 令和元年6月15日、大阪市の阿倍野市民学習センターで開催された『第439回 関西日本サイ科学会研究集会』において、中垣光市DCの講演がありました。テーマは「カイロプラクティクの現代(いま)」〜PPK背骨健康法〜。 第1部の講演では、中垣DCの過去の臨床実績から、施術前後のレントゲン画像を比較することで、カイロプラクティックによる改善の実例を示すとともに、施術前の状況と評価、処方と施術の狙い、効果検証、改善後の状況などの説明がありました。会場には、医師を含む医療関係の参加者が複数人あり、カイロプラクティックに関する質問が挙がっていました。質疑応答のやり取りを聞いた感想として、日本の現状では、医療関係者に向けてカイロプラクティックを端的に説明し、その場で正しい理解へ導くことの難しさを実感しました。 第2部は、中垣DCが考案された「PPK背骨健康体操」を披露し、会場の皆さんは熱心に説明を聞いて実演に参加していました。尚、中垣DCによると、この体操を効果的におこなうためには目的や強度を正しく理解しておく必要があるので、まずは、指導者から詳しい説明を受けながら体操を始めることが望ましいそうです。講演の最後に、今後も関西日本サイ科学会で定期的に「PPK背骨健康体操」の勉強会を開催すると発表がありましたので、更なる広がりが期待できそうです。 業界としても、未だカイロプラクティックを知らない方々に向けて、カイロプラクティックの良さをどのように伝えていくかは難しい課題です。中垣DCの講演と体操の考案は良い一例だったと思います。カイロプラクティクの現代(いま)カイロプラクティクの現代(いま) 拙著「自分で治す!顎関節症」が出版された影響について述べます。まずは、読者からの問い合わせや相談が寄せられるようになり、世間からの関心や信頼の高まりを感じたことが第一に挙げられます。メディア関係者などに会ったときでも、初対面でも今まで以上に信用して私の話を聞いてくれるようになりました。これまでも「顎関節の専門家」という肩書きによって印象には残るものの、もしかしたら奇抜だとも認識されていたのかもしれません。出版業界では「本は名刺代わりになる」とよく言われますが、名刺と違って捨てられることはほとんどないですし、名刺交換時の立ち話よりも説得力があります。歯学博士が監修したベストセラー本ということもあり、私の話に傾聴する歯科医師も当然ながら増えました。これは、カイロプラクターと歯科による地域連携を目指す一般社団法人日本整顎協会の活動にとっては大きな追い風です。先日も50人規模「自分で治す! 顎関節症」出版の舞台裏 ④整顎コラムVol.14藤原邦康 DCDrDr藤原藤原ののDr 藤原のの歯科セミナーで講師を務めさせていただきましたが、歯科医師たちは咬合と姿勢の関わりについて非常に熱心に聞き入っていました。受講者からは熱意や興味・関心の高さを感じました。つい昨今の元気がないカイロプラクティック業界に比べてしまうのですが…、私も10数年前セミナー講師を始めたころの初心に立ち返りました。医師と比べると歯科医師たちは思っていた以上にオープンマインドです。サブラクセーションの概念も抵抗なく受け入れられることも新たな発見でした。歯科医師や歯科衛生士の日常業務は常に前傾姿勢や長時間の細かい手仕事、目の酷使などを強いられています。筋骨格系の知識・技術に関しては、顎関節症の患者たちのためを思う理由に加え、彼ら自身の心身の健康問題としても切実にその必要性を実感しているようです。これらの手ごたえをつかみ、今後も歯科医師や歯科衛生士向けのセミナーを続けていく予定です。決して「隣りの芝」に活動拠点を移すという意図ではなく、歯科医師という医療のプロフェッショナルに認められることがカイロプラクティックの息を吹き返す一つのきっかけになればと考えているからです。歯科医師の本分はあくまでも歯の治療。業務的にも院内でアジャストメントをすることは歯医者さんにとっては現実的ではありません。(我々も顔負けのアジャストメントができる歯科医師も稀にいますが)近隣地域で信念あるカイロプラクターと医療連携し役割分担して、アゴや背骨に悩みを抱える地域民を救済していき、認められることが理想です。

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