カイロタイムズ116号(高解像度)
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(4)2019年2月18日発行 カイロタイムズ 116号 アクティベータ・メソッド(AM)は、カイロプラクティックの業界では最も広く研究されているカイロプラクティックテクニックの一つであり、臨床試験において有効性が裏付けられた唯一の機器調整テクニックと言われています。有効性を裏付けられたという意味は、何百もの臨床および科学的査読(peer review)論文を発表し、主要な学術研究機関と協力して学術雑誌に掲載されているといす。そのような医学業界のリサーチに比べるとカイロプラクティック業界のリサーチは小規模ではありますが、ドクターファーは地道に学術研究を積み重ねて、カイロプラクティック業界に貢献し続けてきました。今日、AMが組織として発展してきた理由の一つがリサーチに力を注いできたという実績です。そこにはドクターファーの先見の明が際立ちます。 ドクターファーは臨床で多くの患者を診ていましたが、AMを世界規模に発展させるためには、学術研究が必須であるということを悟ったのでしょう。共同創始者のドクターリーが1980年代初頭に引退してから、研究の世界に足を踏み入れます。1987年、The National Institute of Chiropractic Research (NICR)がドクターファーによって創設され、今日に至るまで、AM関連の論文が数百に及びました。 1985年、ドクターファーが最初に本格的な研究を行ったのは医学部の施設でした。カイロプラクティック業界としては初めてNIH(アメリカ国立衛生研究所)からの補助金を受けてアクティベータ器に関する研究が行われました。当時、医学界と敵対関係が浮き彫りにされていたカイロプラクティクが医学部で研究を行うというのも初めての試みでしたし、NIHからの補助金を得て研究を行うのもカイロ業界では初めてのことでした。 現代の人たちは、医学モデルを基本に医療というものを捉えています。そこには、科学的な研究が行われているかどうかで、その医療に信頼を寄せる傾向があります。「医うことです。学術誌の信頼度にもいろいろありますが、カイロプラクティック業界において、学術論文が学術誌に掲載されるということは大変な資金と労力が必要になると思います。 医学業界においては、大学病院や国が援助する研修施設などとタイアップして、研究者や臨床家、主には製薬会社の膨大な資金力によって高価な検査機械を使って学術研究機関で幅広く研究が行われまAMリサーチに関して ①保 井 志 之 DCVol.18学=科学的=信頼」という構図は長い歴史の中で築かれたものですが、「科学的=信頼」というのは、何を持って信頼なのかという観点は、議論の余地はたくさんあると思います。しかしながら、「カイロプラクティック=非科学的」にならないためのドクターファーの地道な実績に対しては尊敬の念を抱きます。カイロプラクティックには哲学、科学、アートという土台がありますが、科学の領域においてAMは多大な貢献をしているのではないかと思います。(②へと続く)アクティベータ器 痛みがあるから病院へ行く、これが普通です。しかし痛みがない時にでも健康維持や管理のためにカイロプラクティック治療をメンテナンスケアとして続けると、結果として痛みの予防になるという研究がありました。治療を定期的に受けた患者たちは1年を通して腰痛の痛みや不快感を感じる日数が劇的に減りました。研究は18歳から65歳までの腰痛持ちの患者328人がランダムに集められ二つのグループに分けられました。定期的にメンテナンス治療を1年間受けるグループ、もう一つは腰痛が出た時だけ治療を受けるグループです。毎週研究者はたった一つの質問をしました「先週腰痛に何日間悩まされましたか?」。1年後メンテナンスケアのグループの方が痛みを感じる日々が12.8日少ないという結果になりました。この約2週間、メンテナンスを受けていない患者たちは日々の生活が困難になっているわけです。会社や学校に行けない、予定のキャンセルなどということが起こっていたかもしれません。 別の研究では6ヶ月以上腰痛に苦しむ患者たちにまず月12回マニュピレーションを施し、その後9ヶ月間一つのグループは2週間に1度の治療、別のグループは何も受けませんでした。メンテナンスケアを続けた方は相当な改善が見られましたが、1ヶ月だけのグループは痛みや障害等が戻ってしまいました。 私たちは予防医療も大事だと説いていく必要があります。私のクリニックでは痛みが伴わなくてもマニピュレーションを含む治療を受けに月に1〜2度必ず訪れる患者たちもいます。彼らはメンテナンスケアで痛みや病気の予防が出来ることを実感しているのでしょう。病気の予防となっているのであれば時間とお金もセーブできているはずです。痛みがあるから、調子が悪いから病院に行くという現代の医療モデルから脱却してメンテナンスケアを受けにカイロプラクターや病院に定期的に通うというモデルが理想です。私たちはその予防治療を化学薬品なしで行えるのです。いつかカイロプラクティックケアが予防医学の中心になることを夢見ています。これは業界を変える大きな一歩となることでしょう。カイロプラクティックの予防効果中島 一光DC カイロプラクティックは、世界的に補完医療と認知され、先進諸国では法制化されているが、日本では医業類似行為か慰安行為か何なのか不明瞭なままで容認されている。勿論、職業として省庁府の職業分類に挙げられているが、税務処理上の便宜程度に過ぎない。 憲法第22条は、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」と記されていて、職業選択の自由を保障しているが、営業権は保障していない。気に入らぬなら、「アメリカでも何処でも行って(カイロプラクティックを)やってくれ!」という訳だ。 GHQ占領政策が西洋医学以外を禁止した際、戦前の法的地位取得を願う鍼灸師の活動にあん摩師と柔整師が合流し、医業類似行為の枠が決まったのだ。昭和22年(1947)制定のあはき法は、「何人も第1条に揚げるもの(あまし、はり、きゅう、柔道整復)を除くほか、医業類似行為をしてはならない」(第12条)とした。公布時に医業類似行為を3カ月以上業としていた者は都道府県知事に届け出て当該医業類似行為を業とすることができる(第19条)と規定し、届け出資格は公布時(1947年)に当該医業類似行為を行っていた者に限られた。 後藤博氏は、療術の講習を受け、福島県であん摩師、はり師、きゅう師、柔道整復師のいずれの資格も持たず、療術既存業者として届出もせずに電気療法(HS式無熱高周波療法)を業としたことで「あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法」が禁じる無資格医業類似行為を行ったと判断され、昭和28年(1953)に福島県平簡易裁判所から罰金刑の判決を受けた。 「自分の施した療法は、いささかも人体に危害を与えず、保健衛生上にも何らの悪影響を及ぼさず、しかも相当の治療効果を上げ得るもので御意見番 物申す禁止規制の恐れ中垣 光市 DCあるから、これを業とすることは少しも公共の福祉に反するものでなく、憲法第22条の保障する職業選択の自由の範囲内に留まるものである」と後藤氏は仙台高等裁判所へ控訴した。 仙台高裁は、人体への危害の可能性、正当な医療を受ける概念への影響、疾病の治療を遅延する恐れなどから、正当な医療の普及徹底と公共の保健衛生の改善向上のため望ましくないと判断し、「職業の自由は公共の福祉に反しない範囲においてのみ認められる」と結論して、控訴を棄却した。 「自分の施した療法は、何ら危険はなくかつ有効無害であり公共の福祉に貢献しているのであるから、かかる職業に対し、あはき法を適用して処罰するのであれば、同法は憲法第22条に違反する無効なものであり、自分の行為は罪とはならないものである」として後藤氏は最高裁へ上告した。 最高裁は、「医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのは、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」が、禁止処罰自体は「公共の福祉上必要であるから(あはき法)第12条、第14条は憲法第22条に反するものではない」として原判決を破棄、仙台高裁へ差し戻した。 この昭和35年(1960)最高裁判決が「有害の恐れのない医業類似行為は禁止、処罰の対象にはならない」という新しい基準となり、覆されることなく今に至り、法的地位も保障されぬままのカイロプラクティックが営業権を容認される法的な根拠とされてきた。 あはき法は、昭和39年(1964)改正で医業類似行為の届出に関する規定と有効期限が記された第19条は削除された。また、手技療法資格は、あん摩師のみからあん摩マッサージ指圧師(あまし)に広げられ、届出者は職業として無期限の営業が可能になった。手技療法は、あまし以外で開業することがあはき法第12条で禁止されている。 一方、平成2年の三浦レポート以来、平成29年の消費者庁ニュースリリースがカイロプラクティックの危険性に再度の警鐘を鳴らし、有害の恐れが明らかにされているから、最高裁判例に照らし合わせて、禁止、処罰の対象になるか、あるいは何らかの規制が出されても不思議でない事態だ。 ちなみに、後藤氏の場合、仙台高裁での差し戻し裁判で、昭和38年(1963)7月有罪となり、再度の上告は棄却されて敗訴が確定した。無資格無届出の後藤氏に組織の後ろ盾はなく、自分の信念だけを支えにただ一人で立ち向かった12年間に及ぶ裁判闘争だった。誰しも後藤氏の立場に身を置けば、業界が纏まることを行政側から勧める意味は理解可能な筈。末筆ながら、科学新聞社様の関連記事を参考にさせていただき、ここに謝意を表す。カイロタイムズに広告掲載しませんか?カイロタイムズに広告掲載しませんか?広告主募集!商品紹介代理店募集セミナー案内など0120-223-505TEL:E-mail: info@chiro-times.co.jpCHIRO-TIMES日本医科学出販株式会社カイロタイムズ詳細は下記までお問い合わせください。締切は発行日の1ヶ月半前1ヶ月半前117号予定2019年5月発行118号予定2019年8月発行

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