カイロタイムズ114号
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(5)2018年8月20日発行 カイロタイムズ 114号 「カイロプラクティックの学校を卒業して一人前になったら日本に帰ってきます」という言葉を残し、アメリカへやって来てから既に17年の月日が経ちました。結果として日本に戻るという約束は果たせそうにありませんが、カイロプラクターとして10年以上が経過し、日々の診療を通して少なからず地域の方々のお役に立てているのではないかと思っています。 私はカイロプラクティックを通して様々な方に出会い、学びそして成長させてもらいました。そしてそれはカイロプラクターとしてだけではなく一人の人間として大きく成長させてもらい、大変貴重な自分の財産となっています。その一つに私が学生時代に何度も通ったガンステッドセミナーのドクターアレックスの言葉があります。私は何かあるたびにこの言葉の基本を思い出し、自分をリセットして物事に取り組むようにしています。その言葉は〝Do the Right Thing.〞(正しいことをする)です。このとてもシンプルで皆さんにとっても当たり前なことですが、私も人間ですから意外と普段忘れてしまったり、雑音にかき消されてしまったりします。ドクターアレックスは患者さんの話やクリニック経営の話をする際にこの言葉をおっしゃっていました。一般論としてこの世には正しいも、間違ったもありません。それはその人の考え方や宗教観や哲学によって決まるからです。しかし、一般的なモラルとしてまた人間としてそしてカイロプラクターとして自分の判断で正しいことをしましょうと私は解釈して実践しています。これはアジャストメントや治療を例にとってもそうであると思います。患者さんのアジャストメントを必要としているサブラクゼーションを探し、必要としているアジャストメントを必要な方向に、そして必要な深さにセットするということだと思います。また、患者さんにとってアジャストメントが必要なければ行いませんし、他の治療が必要ならそれをすることです。 クリニックの経営者としてもそうですがリピート率や売上がどうのと考える前にまず、患者さんにとっても自分にとっても正しいことをするということです。仏教では因Vol.2Vol.2世界で活躍するDC堀井岳久 DCこの世界で生き残る②Do the Right Thing果応報、キリスト教では「与えよ、さらば与えられん」という言葉がある通り、人として正しいことをすればそれ以上のものが返ってきます。当たり前のことでしょうが、私が日々忘れないようにしている言葉です。 学生時代の柔道で痛めた腰が原因でカイロプラクティックに出会い興味を持つ。大学卒業後、会社員として働くもいずれ人の役に立つ仕事をしたいと思い、働きながら柔道整復師の学校に通うもアメリカでカイロプラクティックを学びたいという気持ちが抑えきれず、2002年1月に渡米。2007年にLACCを卒業し、DCとなる。学生時代からお世話になっていたLA郊外オレンジカウンティのドクター新井のクリニックに就職し、臨床に励む。その後独立し、2015年にテキサス州ダラスに自身のクリニックを開業、現在に至る。堀井 岳久DC プロフィール●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 昨今のマスコミを賑わせたのが某大学アメフト部員の傷害事故に関する一連の報道だ。スポーツマンらしい正義感と人間らしい思いやりの欠如からだろうか、立場をわきまえず全て他人事のような態度を続けていた指導者達が、社会の批判と勧善懲悪の制裁を受けた。カイロプラクティックをアメフトに置き換えてみると如何だろうか?比喩というものは論理学的に必ずしも常に完全ではないが、業界人なら考えてみる内容はある。 傷害事故は、旧厚生省平成3年通達にも関わらず、骨折、脱臼、果ては脊髄損傷等の重篤な事故が多発している事実に基づいて危険性が指摘され、安全性改善要請(消安全第187号)が消費者庁から出されている。被害者の申請に基づくデータは消費者庁で管理していて、加害者たる施術者の氏名、資格、所属団体も公表されていない。 危険な施術で身体的、精神的、及び経済的な被害を受けた患者さん達は勿論だけれども、間違った理論や危険なテクニックを授業料を払って教えられた者達も被害者であるとも言える。真の加害者は、危険な自称カイロプラクター達を乱造し続ける輩達だ。 某団体の年表によると、短期コースを提供する国内の主な業者達に学校協会の設立などをもって教育課程の充実などが促されたけれど、彼等が応じた形跡、もしくは結果が無い。更に、教育とは言っても個人会社が自由に「商売」する学校ゴッコに他ならない。 どのレベルの人達が教育に関わってきたのだろうか。個人的な話で恐縮だが、某カレッジのA校長に施術をお願いしたことがある。A校長が得意というガンステッド・テクニックではASexのダウンサイドはキック・プルのテクニックがテキスト通りだが、ダイビング・パンチみたいなことをされた。高度な技能を有するDC達が集う総本山マウント・ホーラブに筆者は幾度も行ったが、ダイビング・パンチみたいなことは全く見たことがなかったので、そのようなテクニックを誰から習ったのかと訊くと、某スクールのB先生だと満面の笑みで誇らしげに答えた。 基本的な生体力学的条件が満たされるなら、テクニックのバリエーションは許されるが、関節面と関節面を衝突させ合うような生理学的不合理はおおよそマトモなカイロプラクターならしない。A校長にホンモノのガンステッド・セミナー参加を幾度も勧めたが、無駄であった。B先生への敬愛は好きだが、セミナー参加し、自らの技能の評価検証がされれば、虎の威を借る狐の如く振る舞う必要は無いのだ。 しかし、事実は更に奇妙なのだ。B先生のセミナーで勉強しているという治療家のC氏から相談を受けたことがあり、「B先生が『ASは無い』と仰るんです」とC氏は困惑していた。B先生と懇意なD氏によると「皆、左のPIexで、日本人にはダブルPIが多い」そうだ。 仙腸関節にASのサブラクセーションが無いのなら、米国のカイロプラクティック教育の基本に誤りがあることになるし、或いは日本人固有の現象があるなら、貴重な臨床的発見だろうが、科学的根拠が無ければ、単なる個人の意見に過ぎない。有りもしないテクニックに危険性は高くても有効性は低い。それをまことしやかに他人に教え、教えられたほうは疑問すら抱かず、有りもしないテクニックを治療と信じて患者に行うばかりか、学生達に教えて、学生達はその有りもしないテクニックをそれぞれの患者さん達に行う。このプロセスの根本的なエラーが、多くの被害者をつくりだし続ける負の連鎖の原因だ。 特定の個人の「背に腹はかえられぬ」行動をとやかく非難するのではない。彼等の活動があったから現在の業界があるのかもしれないが、教育としてのエラーが長らく続いてきた結果、業界の粗悪な質的問題が解消されていない。厚労省通達と消費者庁要請を真摯に受けとめるべき現状の業界では全員が、何処の誰から習ったに関わらず、用語の定義や基礎概念を含めて、施術の安全性を一から全て見直す必要がある。 安全性改善は業界に属する各団体の指導者の責任感と自主性に委ねられている一方、DC達は、最高レベルの教育を受けた者として、自らが好むと好まざるに関わらず業界の指導者と見なされているので、相応に自主的な責任ある行動が期待されている。御意見番 物申す東洋の不思議中 垣 光 市 DC カイロプラクティックの独自性の根幹は他の医学・医術とは異なる哲学・科学・芸術の三位一体によるものですが、それを蔑ろにするDC達によってその存在意義が失われ、将来的にはオステオパシーが辿った滅亡への道を追従する危機に直面しています。 西洋医学は出血性外傷、複雑骨折、心肺停止など重篤な患者への救命救急では抜群ですが、一般的な患者の場合はどうでしょうか。 一般的な14種の症状に対する診断所見結果は、心理学的原因:10%、器質性原因:16%、原因不明:74%。(American Journal of Medicine 1989) 僅か約15%の医療行為しか科学的な証拠に基づいていない・・・これは一部である、何故なら医学誌に掲載された論文のたった1%のみが科学的と考えられるからだ。(British Medical Journal 1991) 毎年1600人が、処方された薬の副作用で入院し、16万人がその副作用が原因で死亡している。毎年18万人が医師が原因の傷害で死亡している。(Journal of American Medical Association 1994) 心臓病や癌などの死因に続いてアメリカでの死亡原因の第3位は医師(西洋医学医師)。医原病で死亡する人は年間23万人〜28万4千人で、調査に多少の誤差があったとしても第4位の脳血管障害との間には著しい差がある。(Journal of American Medical Association 2000) 医薬品の宣伝材料の僅か6%しか根拠がない。(British Medical Journal 2004) 医療(西洋医学)が原因で死亡する米国人は毎年78万3936人、心疾患が69万9697人、癌は55万3251人と、西洋医学は米国民の第一の死亡や負傷原因。(www.lef.org ,2004) 米国での死亡原因は、第1位が心臓疾患(約61万1千人)、第2位が癌(約58万5千人)、第3位が医療過誤(約25万1千人)、第4位は慢性閉塞性肺疾患(COPD:約14万9千人)であり、医療ミスが死亡原因の第3位である。(British Medical Journal 2016) これらの研究論文で明白なように、西洋医学は皆が信じている程には科学的でもなく、原因を解明している訳でもなく、効果的でも安全でもないばかりか、死亡原因の第3位という危険な医療です。 論文が掲載された臨床研究、高名な医師の判断や権威のある医学的指針などを信頼することは、もう不可能であカイロの存在意義松下 順彦DCVol.る。The New England Journal of Medicineの編集長を20年以上務めた私が、ゆっくりと、嫌々ながら至ったこの結論に全く喜びを持てない。(Dr. Marcia Angell) 可能性として、出版された論文の半数は、単純に言って虚偽だろう。(Dr.Richard Horton, Editor in Chief of The Lancet) 権威ある科学・医学誌の二人の編集長が指摘するように、製薬企業や医療機器企業による、医師、研究者、大学、学会、行政、そして学術誌やその編集者への寄付・研究資金等の提供などの経済的支援によって、研究論文や指針、医師の判断すら最早信用するに値しない時代となり、根拠に基づく医療もその根拠が崩壊している状況です。 対照的に、The American College of Physiciansの腰痛診療新ガイドライン2017年版で、急性・慢性ともにカイロプラクティックは安全で有効と推奨されるなど、まだ特定疾患だけだが、その真価は評価されてきています。製薬企業による研究費支援を受けない、まだ信頼できる研究によって、評価されているのです。 西洋医学の問題点が露呈した今こそ、カイロプラクティックを純粋に守り、研究し発展させて、安全で効果的な独自の医療として存在させることこそが、我々カイロプラクターの責務であり人類への貢献となるのではないでしょうか。 (参考)https://www.you-tube.com/watch?v=jcnd3usd-Nxo&feature=youtu.be https://www.you-tube.com/watch?v=aRBvMQ-Bucxg

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