カイロタイムズ111
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(3)2017年11月20日発行 カイロタイムズ 111号 2017年10月21日(土)、22日(日)の両日、兵庫県宝塚市にて一般社団法人日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC、中川貴雄会長)第19回学術大会(中川達雄大会長)が開催された。今回の学術大会は、手技療法を主体とする臨床家には欠かすことのできない「骨・関節の動きを科学する」というテーマの基に行われた。今大会は、中川貴雄会長と大会長である中川達雄氏が教鞭を取られる宝塚医療大学の大講義室にて開催された。懇親会も隣接する学生食堂にて行われ、日本各地から集った参加者たちは互いの交流を深めた。折しも今回は超大型の台風21号が接近し、悪天候であったにも関わらず200名近くもの参加者が集い、大盛況の大会となった。 今回の招待講演は、基調講演に大阪大学大学院医学系研究科・運動器バイオマテリアル学講座教授で、整形外科医の菅本一臣先生による「骨・関節の動きを知る」、特別講演には宝塚医療大学・保健医療学部教授であり、歯科医の永瀬佳孝先生による「基礎医学の知識をどのように運動療法に生かすか」という題目でお話しいただいた。 大会1日目の特別講演で永瀬先生は、現場のセラピストが基礎医学に基づく治療法を理解していないことに気づき、解剖学や生理学に基づく検査法や治療法を大学で指導されており、臨床での応用方法などについて解説された。おおよそ基礎医学を修めている者には見聞きしたことがあるはずの基本的な解剖学や生理学なのだが、実際の疾患に繋がる形で解説されると、なるほどと言わざるを得ない話が盛りだくさんであった。 大会2日目の基調講演で講演いただいた菅本先生は、「生きた人間の関節運動を世界で初めて解明した」先生であり、3D-MRIを用いた関節運動の解析についてお話しいただいた。まず解析するソフト開発に始まり、いくつかの関節運動を3D画像の動画を交えながらご説明された。その可動性がよく議論される仙腸関節の動きは、屈曲・伸展方向に平均で4〜5度、動きの大きな人で10度ほどあるとのことだった。まさに目から鱗の講義だった。 ワークショップでは、歯科医である幸田秀樹先生による「顎口腔系の繋がり」、辻本善光先生による「理学検査を用いたサブラクセーションの検出」、中川貴雄先生による「マイクロ牽引-臨床現場での応用-」、そして伊藤彰洋先生による「椎間孔テクニック(IVF-T)3」と、以上4名の先生に実技を交えながらご講演いただいた。その他に一般講演9題も発表された。 また禁忌症講座では、吉岡一貴先生による「腰部周辺のレッドフラッグ・イエローフラッグ」、その他にも研究発表や症例報告などの発表もあり、大変充実した2日間となった。 来年度の学術大会は、当学会にとって記念すべき第20回大会となる。開催地は東京で、これまでの集大成となる大会にするべく、総力を挙げて開催に臨む所存である。(JSCC代議員 中原裕幸) 2017年10月22日、「カイロプラクティック国際会議(International Confer-ence on Chiropractic,以下ICoC)」が、ソウル市江南地区にあるセントメアリー病院・セミナールームにて開催された。ICoCは韓国カイロプラクター協会(Korean Association of Chiropractors)の主催によるもので、「所在国の認可する正規大学において、アクレディテーションを取得したカイロプラクティック教育プログラムを、アジアで初めて運用させた実績を持つ、韓国ハンソ大学が後援。2010年から始まった、比較的新しい国際会議である。 ICoCはこれまでにも、同大学関係者や在籍学生による研究発表にとどまらず、日本をはじめとするアジア地区のカイロプラクターや徒手療法家の研究発表を積極的に受け入れてきた。今回は日本から約20名が参加。WHOガイドライン基準のカイロプラクターとして井元雄一Ph.D.の発表があった他、今春より我が国において大学教育課程に取り入れられ、いま注目されている「姿勢科学」の分野からの発表(井上誉久氏、大村裕氏、肥田明子氏、美並剛吉氏)など、日本からは合計5件の研究発表が選抜され、韓国側の参加者の関心を大いに集めていた。更に、会議冒頭部では、アジアのカイロプラクティックの発展に貢献したとして、井内隆詞Ph.D.が表彰を受けた。 また今回は、カイロプラクターとしてだけではなく、研究者としても世界的に著名な、米国のクリストファー・コローカ博士が、特別講義を提供。博士がこれまで積み上げてきた52件に及ぶ研究報告をダイジェスト形式で紹介しながら、実際に人体に対して行った実験映像なども交え、アジャストした瞬間に人体に起こる様々な現象について解説した。同時に、ICoCのような国際舞台での研究発表の重要性についても力説。アジアにおいて徒手療法の可能性を模索する参加者を大いに勇気づける内容であった。 会議発足時から継続参加し、自身もハンソ大学のカイロプラクティック理学修士課程を修了した日本カイロプラクティックエビデンス研究会の小野寺靖Ph.D.は、「今、業界として消費者や行政から求められているのは、施術行為における安全性です。それを担保し、確かなエビデンスを構築していく意味でも、このような国際的な会議でそれぞれが臨床に基づく研究を発表していくことは、大きな意味を持つと考えます。国内の徒手療法家には、豊かな経験を持つ方も多数いらっしゃると思いますので、今後そのような方々の参画を期待します」と述べた。 今回のICoCでは、次回の開催地が、2018年10月、日本の京都府内となることが正式に発表された。これまで海外ということで会議への参加を見送っていた、国内のカイロプラクターおよび徒手療法家にとっては朗報である。本紙でも詳細が決定次第、随時紙面にて報告していく予定である。今後、更に安全性の認知が広がることを期待したい。第19回学術大会一般社団法人 日本カイロプラクティック        徒手医学会カイロプラクティック国際会議韓国で開催来年は日本での開催が決定 初日に行われた基調講演では、日本のスポーツの未来と題し、スポーツ庁次長今里讓氏が政府方針や取り組みを講演。中長期的なスポーツ政策の基本方針として、スポーツの「楽しさ」「喜び」を軸に全ての人々がスポーツの力で輝けること、主体的に取り組めるようにすることなどが挙げられた。日本は特に20〜30代女性の運動実施率が低く、文化・スポーツ・観光の融合のほか、スポーツと漫画を取り入れた地域活性、大学スポーツの振興など、女性がスポーツに関わる機会を増やす取り組みが始まっている。イギリスで生まれたキャンペーン広告「This Girl Can」のように、周りの目を気にしすぎず自分のやりたいスポーツを楽しむ女性を応援する動きも、女性のスポーツ参加率の向上に貢献すると期待されている。 トークセッションでは一風変わった取り組みが紹介された。一般社団法人世界ゆるスポーツ協会は、これまで競技でしかなかったスポーツの概念を覆し「大会での勝ち負け=TOP」ではない「別の価値=POP」を見出す活動を展開している。走れないイモ虫ラグビー、ドリブルNGで赤ちゃんを扱うようにそっとパスしなくてはならないベビーバスケットなど、これまでにない斬新な、でもなるほどと頷ける正反対のルールを持つスポーツを創作。超高齢化社会でスポーツ弱者が多い日本だからこそ、年齢・性別・運動神経に関わらず誰もが楽しめるスポーツを生み出せる。自分に合った心から楽しめるスポーツに出合うこと、参加し生み出していく喜びは心身の健康にもつながるはずだ。これらの取り組みは、日本のスポーツの未来を明るいものにしてくれるかもしれない。 アスリートから一般の人まで、使いやすい製品が近年人気を集めている。トータルボディケアブランド「ドクターエア」のブースでは、2016年度グッドデザイン賞を受賞した『ストレッチロール』などさまざまなストレッチ&エクササイズツールのお試し体験を実施。『ストレッチロール』はウエムラカイロプラクティックオフィス院長でスポーツメディカルトレーナーの上村高史D.C.がプロデュースした製品だ。最大3分間で10,000回振動し、硬くなった筋膜にアプローチすることで筋膜の収縮機能・柔軟性を上げ、ストレッチ効果をより高めるというもの。関節の可動域が広がり、筋肉の硬直による体の不調の軽減や、ケガをしにくい体づくりをサポートする。シンプルかつ軽量化された素材・デザインも好評で、MLB上原浩治選手をはじめ多くのトップアスリートやチームで正式にトレーニングギアとして採用されている。4つの振動レベルを使い分けることでアスリートから一般の方、リハビリ・介護の現場まで、老若男女問わず幅広い分野で利用されている。 3Dセンサに向かって歩くだけで「歩く姿勢」を数値化する『NEC歩行姿勢測定システム』は、「歩行」に注目したシンプルで使いやすいセルフメディケーションサポートツール。NECとアシックススポーツ工学研究所の協力で実現したもので、姿勢評価に関しては一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)の意見も参考にしている製品だ。「歩行」を数値化して継続的に測定することで、身体の変化を視覚的に確認し、より効果の高い健康維持・改善活動をサポート。デイサービスや介護老健施設、整・接骨院、スポーツ専門学校や理学療法士の育成機関などでも導入が進んでいる。その他、水に溶かすだけで経口補水液がつくれるタブレット『O.R.S』が日本に初上陸。アスリートの効率的な水分補給から日常生活での熱中症・脱水対策までカバーでき、携帯や保存のしやすさが好評だ。 スポーツシーンに限らず幅広く、しかも自分で主体的に使える健康ツールが注目されるのは、超高齢化社会を迎え「自分でできることは自分で」「治療から予防へ」という意識の高まりが表れていると言える。スポーツ・健康産業の最新トレンドが ビッグサイトに集結 真夏の太陽が照り付ける東京ビッグサイトで「SPORTEC(スポルテック)2017」が開催された。2017年7月25日〜27日の会期中、3日間合計で50,972人が来場。スポーツウェアやスポーツフード、ホームヘルス&ダイエットなど各種EXPOに加え、今回新たにリラクゼーションEXPOが新設されフルラインナップといった印象だ。第26回ヘルス&フィットネスジャパン、第2回リハビリ・介護予防サービス展RE-CARE JAPAN、第2回ウェルネスフードジャパンも同時開催され、過去最多となる800社が出展。「スポーツ」「フィットネス」「健康推進」「スポーツレジャー」に関するあらゆる最新情報を入手できる、文字通り日本最大のスポーツ・健康産業総合展示会となった。SPORTEC 2017 開催SPORTEC 2017 開催リラクゼーションコンテストJAPAN2017 予選会日本のスポーツの未来使いやすい製品が人気

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