カイロタイムズ103号
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(5)2015年11月16日発行 カイロタイムズ 103号編集部 大洋州や欧州では、カイロプラクティック教育が総合大学の1コースとして提供されるのに対して、米国では単科大学で提供されることが多いです。両者では教育の面において何か違いがあると思われますか。ショブルック どちらも優秀なカイロプラクターを養成できることは疑いようがありません。それぞれに長所や利点があります。単科大学には強い自主性があります。総合大学は、先ほど述べたように、研究や、さらに高度な学位取得という面において、学生により多くの進路を提供できます。また、基礎科学科目の選択肢が多く、理学療法や中医学といった、カイロ以外の医学を専攻している学生とともに学ぶ機会も持てます。編集部 現在の地位に至った経緯を教えてください。ショブルック 私はマッコーリー大学を卒業した臨床家です。最初、自分の州のライセンス委員の仕事をしていたのですが、その後、CCEAに推薦され、さらに多くのことに関わるようになりました。編集部 日本にはアクレディテーションを取得した教育機関が1校ありますが、政府に認可された学校ではありません。それにも関わらず、CCEAはアクレディテーションを付与しました。ショブルック 私の就任以前から、豪州RMITとTCCには提携がありました。そのおかげで、アクレディテーション取得に十分な教育プログラムを構築することができたのだと思います。編集部 質が十分であれば、政府に認可されていない機関にアクレディテーションを付与しても構わないということ  2015年8月21日(金)、ハンソ大学(韓国ソサン市)にて挙行された卒業式に参加するため、同大学を訪問した、大洋州カイロプラクティック教育審議会(CCEA)会長マイケル・ショブルック氏に、カイロプラクティック教育について聞いた。編集部 CCEAの会長であり、国際カイロプラクティック教育審議会(CCEI)の会長でいらっしゃいますよね。この2つの組織について簡単にご説明頂けますか。ショブルック氏(以下ショブルック) CCEAは大洋州のカイロプラクティックプログラムを査定し、アクレディテーションを付与します。豪州、ニュージーランドで始まり、現在は、韓国、日本、マレーシアも管轄しています。 CCEIはCCEA、CCE(米国)、CFCREAB(カナダ)、欧州CCEの4つのアクレディテーション団体で構成されており、この団体間で、高い基準のカイロプラクティック教育が維持されることを担保します。また、CCEIは「(ライセンスの)可動性」にも取り組んでいます。4団体が同じ基準を守ることにより、卒業したプログラムがアクレディテーションを取得している限り、例えば、韓国や日本の卒業生は米国で臨床が許されます。これは、米国の一部の州を除き、現在、ほぼ実現しています。編集部 CCEAはCCE(米国)などと異なり、文化や言語がそれぞれ違う国を管轄しています。この点において何か困難はありますか。ショブルック 大変な部分はありますが、アクレディテーション現地査察チームの中にその国の言語を話し、文化を理解するメンバーを必ず入れるなどしています。欧州CCEも同様の状況ですね。編集部 以前は各CCEは、管轄の地域のプログラムだけを査定していましたが、現在では管轄外の教育機関の査定も許されています。韓国のハンソ大学、日本の東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(TCC)など英語を使用しない国のプログラムを、CCEAが査定するメリットは何だと思われますか。どちらにしろ、提出書類を全て英語に訳し、現地査察も英語で行うのですから、例えば、CCE(米国)に査定してもらう選択肢もありませんか。ショブルック 豪州とアジアは、多くの面でつながりがあったということが一因だと思います。豪州のRMITは、以前、TCCやハンソ大学と提携していました。豪州とこれらの国には、長期間にわたる人的交流があります。また、教育制度が似ているため、日本人学生が多数、豪州の大学で学んでいます。全ての理由を理解している訳ではありませんし、どのCCEに申請するかは、各教育機関次第だと思います。重要なのは、卒業生が認知され、どの国でも臨床ができるようになるためにアクレディテーションを取得することです。編集部 ハンソ大学について、また、ハンソ大学から今回7名の博士号取得者が誕生したことをどう思われますか。最近、増えてはいるものの、博士号を所持するカイロプラクターは世界的にも多くはないですよね。ショブルック ハンソ大学を訪問するのは、アクレディテーション現地査察以来2回目ですが、すばらしい大学だと思います。この後、メインキャンパスとは別の場所にある航空学科のキャンパスに行く予定なのですが、それも楽しみです。 7名の博士号取得については、大変喜ばしいことだと思います。以前は、カイロプラクティック教育機関の卒業生の目標は臨床家になることでした。近年、特に欧州や大洋州では博士号を取得する人がますます増えてきており、研究者や教育者も進路の選択肢となってきています。研究やエビデンスの構築はカイロプラクティックが力を入れていくべき重要な問題です。ですか。CCEAのアクレディテーション基準には、該当教育機関は、その国において認可された教育機関でなければならないという条項があったと記憶しています。ショブルック 政府からの認可についてはCCEAもTCCと議論を重ねてきました。そうですね、もし公的認可の取得が可能であれば、CCEAはそれを望みます。しかしながら、カイロプラクティックは、日本では公的に承認されておらず、日本以外にも同様の状況の国はありますから、CCEAは少し柔軟に対応する必要があります。CCEAは、日本のカイロプラクターが法制化に向けて努力していることを理解しており、それが重要だと考えています。編集部 日本のカイロプラクターたちにメッセージをお願いできますか。ショブルック 国民のために、アクレディテーションを受けた教育という高い基準に向けて努力すると同時に、政府による承認を目指し、団結して協力して頂きたいと思います。CCEA会長インタビュー世界のキーパーソンにインタビューショブルック氏カイロプラクティック理学修士。豪州マッコーリー大学卒業後、20年以上にわたる臨床経験を持つ。大洋州カイロプラクティック教育審議会(CCEA)会長国際カイロプラクティック教育審議会(CCEI)会長ヘルスプロフェッショナル・アクレディテーション・カウンシルフォーラム(豪州の11の公的医療資格のアクレディテーション審議会を統括)メンバーマイケル・ショブルック氏 プロフィールRMIT大学カイロプラクティック学科日本校卒KIZUカイロプラクティック勤務AKEDAカイロプラクティック院長2007年~2011年JAC関東甲信越ブロック幹事2011年~JAC関東甲信越ブロック長明田 清吾 (あけだ せいご) 氏 プロフィール 日本カイロプラクターズ協会(JAC)は5つの地域ブロックに分けられています。関東甲信越ブロックは2015年9月現在、地域ブロックで最も多い会員数を抱え、218名が在籍しています。会員数が多いというメリットを生かし、また、臨床経験豊富な先生方がお持ちの知識・技術という財産を、他の会員に広く伝えて頂けるようにとの思いから、セミナー講師は会員の方にお願いしています。 昨年は広布カイロプラクティックの黒澤明先生に「ガンステッドセミナー」、今年7月にはJCA-TOKYOの会長を務めておられる稲垣一郎先生に「サプリと筋力検査を用いた治療前後での血行変化の判定方法」のセミナー講師を担当して頂きました。過去にはKIZUカイロプラクティック院長の木津直昭先生とリガーレカイロプラクティック院長の日野祐樹先生の経営セミナーなども開催しました。 また、当然ながら各会員の臨床歴も幅広く、施術内容も多岐にわたるため、臨床歴の浅い先生を対象としたステップアップセミナー等、色々な層に合わせたセミナーも用意しています。 卒業後、業界活動に興味を持ってもらう目的で、東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(TCC)に在籍している学生会員と一般会員の交流も行っています。 その他、学生会員は、年1回、世界中のカイロプラクティック大学が持ち回りで開催している世界カイロプラクティック学生評議会(WCCS)に日本代表として出席し、各国代表者と交流を行いますが、当ブロックは、それを全面的に支援しています。 今後はセミナーだけではなく、会員同士の親睦を深められる催し物を開催することを予定しています。 JAC関東甲信越ブロック長 明 田 清 吾JAC関東甲信越ブロックの活動明田 清吾氏vol.9 カイロプラクターを養成するのに必要な教育、これを以前に紹介した「カイロとは」の因数分解を利用して表すと(テクニックの教育)×(コンセプトの教育)となる。その構成は今も昔も変わりはないのだが、因数の積の「値」自体はカイロの「三人称」性の変化に並行して間違いなく大きくなっている。しかもその増加分にとりわけ関与しているはテクニック教育である、というのが筆者の見解である。 とは言え、それはテクニックそのものの教育ではない。教授すべきテクニックの数を増やし、どんなに丁寧に教えたとしても、積の値の増加分は高が知れている。むしろテクニックそのものではないテクニック教育、すなわち手技の実践に先立って施術の適否を判断するための知識と技術の教育の方が「値」の増大に深く関与しているのだ。 大砲を撃つにはそれに耐えうる構造と機能を備えた砲台を作っておかねばならない。この理屈をカイロ教育に当てはめると、有効だが誤用すれば身体に大きな危害が及びうるような手技、この実践に備えて相応の知識と技術を教育しておく必要がある、ということになる。 要は、スラストを伴う脊椎マニピュレーションの教育にはテクニック自体の教育とともに相当量の基礎医学および臨床医学の教育が必要であるということ、筆者はこれを強調したいのである。施術者が初診の患者に対して問診票を用いて既往歴の有無と内容を問うからには、一般的な医学的疾患の病態や治療については患者以上の知識を有していなければならない。これは道理としても当然のことであろう。 「技」に自信があってもリスク管理ができないようなら、あらためて安全教育を受けるべきである。ひょっとすると、既往歴を確認していないどころか問診票も使っていません、という施術者がいるかもしれない。図星を指された方は、カイロの看板を下ろして一から出直していただきたい。 医学教育も、リスク管理のための教育という一面がある。薬の処方や手術など、カイロよりも砲撃力の強い大砲を武器とする医学は、かなり強固な砲台で備えをしている。 なぜかわが国では脊椎マニピュレーションの砲撃力への認識が甘い。だから、カイロの施術による危害事例が多いと指摘されても、残念ながら「想定外」のハプニングではないのである。カイロ教育を 考えるヒント⑤Vol.6

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