カイロタイムズ100号
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(8)2015年2月1日発行 カイロタイムズ 100号弊紙は1998年創刊以来皆様にご愛読頂き、おかげさまで今号100号を迎えました。皆様のご支持とご愛顧に深く感謝申し上げます。取材でお伺いするお話や、執筆者からご提供頂く記事を通じて毎号、発見・勉強することばかりです。今後は、紙面だけでなく、昨年リニューアルしたホームページや、新設の編集部ブログも使い、読者の皆様のお役に立つ情報を提供してまいりたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。編集後記カイロタイムズでは、皆様からの寄稿や情報提供を募集しております。〒160-0023東京都新宿区西新宿3-1-5新宿嘉泉ビル8FTEL0120-223-505 FAX0120-223-509E-mail:info@chiro-times.co.jpURL:http://www.chiro-times.co.jp/日本医科学出販株式会社 カイロタイムズ編集部 デンマークのカイロプラクターはかつては、英国や北米のカイロプラクティック大学で教育を受けていた。1994年にようやく南デンマーク大学の健康科学部内に5年制のカイロプラクティック学科を開講することが許可された。当初から次の三つの教育方針が採用された。「1.カイロプラクティックの学生は可能な限り医学生と同じ講義や試験を受ける 2.健康科学分野の修士号を取得するため、学士および修士論文を作成する 3.教育は、分野に関わらず、最新のエビデンスに基づき、ダイナミックなものでなければならない。したがって将来、大学で教職に就きたいカイロプラクターは、積極的に研究を行うべきであり、博士号を保有しなければならない。」デンマークでの他分野の教育と同じく、学費は政府が負担し、学生は奨学金や援助を受けることができる。このプログラムへの入学者数は制限されており、毎年85名が入学を許可される。競争率は国内有数の高さである。 現在、デンマークでは市民1万名に対してカイロプラク デンマークのカイロプラクティックは過去25年、かつてないほど発展し、臨床・教育・学術的環境が統合された。これは世界的に見ても比類のないことだった。この発展は偶然ではなく、大変な努力の結果である。これによりカイロプラクターは、神秘的奥義や思想を持ち、社会から無視され、孤立した代替医療の1グループから脱皮し、高い教育を受けた現代的なヘルスケアプロバイダーという現在の姿へと変貌を遂げた。これに伴い、カイロプラクターは公的保険システムの中に組み込まれた。そして、脊椎や筋骨格系ケアの専門家であり、大抵の場合、脊椎痛と筋骨格系障害研究の推進役とみなされるようになった。すばらしいことに、デンマークのカイロプラクティックは、この変容と同時に、自分たちの独自性を守りながらも職業的アイデンティティーを確立した。ターが1名いる計算であり、この割合は国中どこでもほぼ変わらない。ほとんどが個人開業だが、約10%は総合病院内でフルタイム職員として雇用されたり、教職や研究職に従事したりしている。もう10%はパートタイムで同様の業務に就いている。カイロプラクターの数は着実に増加しているものの、新卒カイロプラクター達にも雇用機会は十分にあり、現状、失業者はおらず、人員削減もほんのわずかである。 デンマークカイロプラクティック協会と、国のヘルスケア予算を管理するデンマーク政府は共同で、研究基金を設立した。年間約3百万米ドル(約3億6千万円)にのぼるこの基金は、カイロプラクティックの研究や卒後教育に充てられ、デンマークのカイロプラクティック研究活動の基幹を形作っている。南デンマーク大学における複合的研究環境は、脊椎痛と筋骨格系障害における国の研究の大部分をリードしており、カイロプラクターは学部、大学、国のどのレベルにおいても中心的役割を果たしている。臨床生体力学研究機関と北欧カイロプラクティック&臨床生体力学協会は両者ともカイロプラクティック教育とも関わりの深い研究機関であるが、今日、カイロプラクターにより運営される組織の中で世界最大かつ、最も成果を上げている団体である。重要なのは、ここで行われる研究は、カイロプラクティックのためのものではなく、脊椎、筋骨格系疼痛や障害における臨床的・疫学的な研究に焦点を当てていることである。カイロプラクターに限らず、世界トップの研究グループと精力的に共同研究を行っている。 最後に、デンマークのカイロプラクティックは独自性を失うことなく、現代的ヘルスケア専門職へと発展し、繁栄している。これは、業界に高い志と強いリーダーシップがあっただけでなく、保険会社、大規模公立大学、地方議員、国会議員といった資金提供者やパートナーと協力する能力も同時に有していたからこそ成し遂げられたものである。世界カイロプラクティック連合(WFC)教育会議発表論文Dr Jan Hartvigsen1989年から2001年までの12年間、カイロプラクティック臨床活動の一方で、南デンマーク大学のカイロプラクティック修士号プログラム開発に関わる。2001年PhDを取得し、2003年南デンマーク大学准教授就任、2006年より教授。PhD学生8名を含む21名のメンバーが所属する研究室の指導の傍ら、多数の研究論文を発表し、権威ある学術誌の編集委員も務める。研究論文の受賞実績は、2001年デンマークカイロプラクティック研究賞、2011年第11回WFC世界大会(ブラジル・リオデジャネイロ)研究論文第1位など。各メディアへの出演や多くの出版物があり、講演活動も積極的に行っている。ヤン・ハートビググセン(Jan Hartvigsen)DC, PhD プロフィール WFC教育会議では、米国だけでなく他の様々な国々の参加者による講演や発表が行われた。その内容は業界の状況、教育に関するもの、学術的なものなど多岐に渡った。 その中で、約25年前にはカイロプラクティックは法制化されておらず、正規教育機関もなかったにも関わらず、現在、その両者が達成されたばかりでなく、カイロプラクティックが独立した専門職として高い地位を保っているというデンマークからの発表は、日本にとっても参考になるのではないかと考え、ご紹介する。変化と影響の事例 〜デンマークにおける   カイロプラクティックの教育と臨床〜ヤン・ハートビグセン DC・PhD カイロが、「あなた」を含む社会との間に介在する「三人称のカイロ」となっている事実とその認識、これが筆者のカイロ教育のあり方の議論の出発点である。その上で、カイロ教育やカイロそれ自体を要素に還元しつつ、初学者に対する教育を中心に言及していきたい。 手始めにカイロ教育を「内容」と「形式」という2つの要素に分解して、両者の関係性について考えてみよう。まずは「2年制」や「週末セミナー」など、はじめに「形式」ありきであとから教育する「内容」を決めるという関係性。これが主客転倒であることは明らかであろう。何を教育するかが決まってはじめてどのように教えるかが決まる、この順序性こそが「内容」と「形式」の適切な関係性なのだ。したがって、何よりもまず教育すべき「内容」について考えなければならない。 しかし、あえてそれに逆らって「形式」に関して先に言っておきたいことがある。世界の標準的なカイロ教育の内容と形式を実践するという「形式」、それをわが国に導入することがどうしても必要である、ということを。 順序を度外視して「内容」より世界のその「形式」を優先するのには深いワケがある。わが国のカイロおよびカイロプラクターは職業的にも学術的にも未熟であり、自ら教育内容を考えて国内的な教育基準を創り上げるだけの実力にいまだ達しているとは思えないからである。カイロへの「愛」や「熱意」が教育論で語られたり、「法制化されていないのだから、どう教育しようが自由だろう」と開き直られたりする現状では、わが国のカイロの行く末は危うい。 さて、話を本来の順序に戻して「内容」について考えよう。だが、もはや紙面にその余裕はない。「肝心なところはいつも次回に持ち越しで、話が一向に進まない」とお叱りの声が聞こえそうである。カイロ教育に関するわが国のカイロの「身の程」を知れたこと、これこそが今回の最大の収穫であり前進であったことに気づいてほしい。 もちろん、かく言う筆者自身が「身の程知らず」なのは重々承知である。カイロ教育を考えるヒント② 日本カイロプラクティック登録機構(JCR)による登録制度が正式に開始され、2014年10月16日に第1回目の登録者名簿が厚生労働省医政局医事課長へ提出されました。JCR登録者は世界保健機関(WHO)の「カイロプラクティックの基礎教育と安全性のガイドライン」に準じた登録基準を満たした方たちです。 このガイドラインでは、1.学校での基礎教育カリキュラム、2.教育を修了した人への試験、3.カイロプラクティック業務を行う人の登録、という3つの重要な事柄について述べられています。例えばアメリカでは、1.カイロ大学を卒業し、2.全米カイロプラクティック試験委員会(NBCE)試験に合格し、3.州の開業試験に合格し登録される、ことで「WHO基準」を満たしたことになります。 日本においては、学校、試験、登録、いずれも国や自治体の協力は得られていない状態ですので、業界が団結して自主的に行っていく必要があります。学校については、東京カレッジオブカイロプラクティックが大洋州カイロプラクティック教育審議会(CCEA)認可教育を実施し、2014年には国民生活センターの要請により経験者向けの安全教育プログラムが開講されました。試験制度は、NBCEの協力で設立された、国際カイロプラクティック試験委員会(IBCE)による登録試験が2011年より始まっています。 さらに今回のJCRによる登録制度の開始によって、日本においても学校、試験、登録とWHO基準を満たす条件がようやく揃ったといえます。 日本のカイロプラクターが全員WHO基準となれるよう、今後も活動と情報提供を続けて参ります。竹谷内医院勤務2012年 RMIT大学カイロプラクティック学科日本校卒業2013年 JAC常務委員長就任山本 修司 (やまもと しゅうじ) プロフィール JAC財務委員長 山 本 修 司WHO基準のスタート山本 修司氏

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